歯式(読み)ししき

精選版 日本国語大辞典 「歯式」の意味・読み・例文・類語

し‐しき【歯式】

〘名〙 歯の形と数を表わす式。哺乳類分類上の重要な形質。左右片側の歯の数を門歯・犬歯・前臼歯後臼歯の順に並べ、上側分子下側を分母の分数式で示す。たとえば、人では 犬では

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デジタル大辞泉 「歯式」の意味・読み・例文・類語

し‐しき【歯式】

歯の数を表したもの。分母に下あごのものを、分子に上あごのものを、片側の分だけ、左から門歯・犬歯・前臼歯・後臼歯の順に数を示す。哺乳類の重要な分類の基準。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯式」の意味・わかりやすい解説

歯式
ししき

哺乳(ほにゅう)類の歯の構成を表記した式をいう。一般に哺乳類は異歯性で4種類の歯をもつが、動物種によって各種の歯数が異なるので、歯式を用いてその数を表す。歯式は、横線の上下に、それぞれ上顎(じょうがく)と下顎の片側の門歯(切歯)incisor、犬歯canine、前臼歯(きゅうし)(小臼歯premolar、後臼歯(大臼歯molarの数を左から順次表記する方法が一般的である。前臼歯と後臼歯をまとめて頬歯(きょうし)cheek teethともよぶ。高等哺乳類の祖先の歯数は、普通は以下のようであった。すなわち、上下それぞれのあごの片側に門歯3本、犬歯1本、前臼歯4本、後臼歯3本があり、総数は44本である。したがって、哺乳類の基本式は

となる。門歯は食い切るのに適し、犬歯は獲物を襲うのに役だっているので、この歯列は基本的には肉食に適したものである。しかし、今日の哺乳類でこの歯式を厳密に残しているものは少ない。ヒトの歯は32本よりなり、門歯2本、犬歯1本、前臼歯2本、後臼歯3本で、歯式は

である。ほかに、次のような表記法もある。哺乳類の基本型を示すと

となる。哺乳類の祖先は前述のように肉食獣であったが、現生する草食動物の有蹄(ゆうてい)類をみると、犬歯が消失した雌ウマでは

の計36本となり、また上顎の門歯と犬歯が消失したウシでは

の計32本となる。一方、現生する肉食動物イヌでは

の計42本で、ネコでは

の計28本である。

[高橋純夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「歯式」の意味・わかりやすい解説

歯式 (ししき)
dental formula

哺乳類の歯の種類と数を示す式で,分類上の特徴の一つとして用いられる。哺乳類の永久歯はクジラ類,貧歯類など一部のものを除くと異歯性で,切歯(門歯),犬歯,前臼歯(小臼歯),臼歯(大臼歯)に分かれ,各歯の数が種や属,あるいは科によって一定している。この数は共通の先祖がもっていた原型のままか,あるいはそれから変化してできたもので,系統上重要な意義をもつと考えられるので,それらを分数のように上顎の歯を分子,下顎の歯を分母に見立てて示し,系統関係の考察の資料としたものが歯式である。その表し方には数種類あるが,最も普通なのは次のように,各歯の略号ごとに上と下の歯を対の数(または片側の数)で示し,最後に総数を記すもので,略号は切歯incisorにI,犬歯canineにC,前臼歯premolarにPm,臼歯molarにMが多く用いられる。また略号なしにコンマなどでくぎって示すこともある。乳歯の場合は小文字で表す。

 イノシシの歯式I3/3C1/1Pm4/4M3/3=44または

 シカの歯式I0/3C1/1Pm3/3M3/3=34または

 このイノシシの歯式は,真獣類の基本式(原型)に等しく,同じ歯式をもつものに食虫類のジムヌラ,デスマン科,モグラ科のヨーロッパモグラ,ミズラモグラ,ホシバナモグラなど,食肉類のミアキス(絶滅),奇蹄類のウマ科とバク科,偶蹄類のイノシシ科,カバ科などがある。いずれも原始的な種類である。他のものでは一部の歯が消失するが,オオミミギツネのように上の臼歯が3~4対,下のが4~5対と増えているものもまれにある。なお,ヒトの永久歯の歯式はである。ハクジラ類では歯の数が不安定で,切歯,犬歯,臼歯などの別がないため,歯式では上下の片側の数の範囲を示すだけである。ハセイルカの歯式はである。有袋類の基本式は真獣類と異なり,次のように切歯と臼歯が多くて前臼歯が少ない。

 I5/4C1/1Pm3/3M4/4=50

この歯式はオポッサム科(全種類)に見られるだけで,他の科のものは,フクロアリクイ(総計50~52)を除き,つねに切歯などの数がこれより少なく,ウォンバットでは切歯が上下とも1対しかない。

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百科事典マイペディア 「歯式」の意味・わかりやすい解説

歯式【ししき】

歯の構成を式で表したもの。普通,哺乳(ほにゅう)類に用いられる。上・下顎の門歯,犬歯,前臼歯(きゅうし),後臼歯の数(片側)を横線の上下に左から順に示す。哺乳類はハクジラ類を除き異歯性で,種類によりおのおのの歯の数が一定のため,歯式は分類上の重要な基準とされる。たとえばヒトでは(式1),ウシでは(式2)である。
→関連項目

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歯式」の意味・わかりやすい解説

歯式
ししき
dental formula

哺乳類の歯は異歯性で,切歯,犬歯,小臼歯,大臼歯で歯列をつくっているが,その歯の種類と数をわかりやすく表現するための式。横線の上下に左から,上下顎の片側の切歯,犬歯,小臼歯,大臼歯の数を記入する。右辺は歯の総数を示す。ブタやイノシシの歯式が真獣類の基本型とされる。

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世界大百科事典(旧版)内の歯式の言及

【永久歯】より

…しかし,はえる時期が代生歯のそれに似ており,機能も生涯にわたって営まれることから永久歯に含めている。したがって,ヒトの永久歯数は代生歯20本,加生歯12本,合計32本であり,歯式ではI2/2C1/1P2/2M3/3=32,あるいはで表される(Iは切歯,Cは犬歯,Pは小臼歯,Mは大臼歯を表す記号であり,片側の上下顎歯数を示している)。永久歯の大きさは,形が乳歯とよく似た切歯や犬歯では乳歯より大きいが,形が似ていない小臼歯,ことに第2小臼歯では乳歯のほうが大きい。…

【歯】より

… 歯の数と形は動物の種類ごとに一定しているため,それらを種の特徴として一つの式で表示することがよく行われる。例えば原型の永久歯式は I3/3・C1/1・P4/4・M3/3=44省略してと書き表し,これを〈歯式〉という。ドブネズミはイヌはヒトはとなる。…

※「歯式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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