死屍に鞭打つ(読み)シシニムチウツ

デジタル大辞泉 「死屍に鞭打つ」の意味・読み・例文・類語

死屍ししむち

伍子胥ごししょが、平王死体を鞭打って父兄の恨みを晴らしたという、「史記伍子胥伝の故事から》死んだ人の言行を非難する。しかばねに鞭打つ。

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精選版 日本国語大辞典 「死屍に鞭打つ」の意味・読み・例文・類語

しし【死屍】 に 鞭(むち)(う)

  1. ( 中国春秋時代、伍子胥(ごししょ)が父兄の仇である楚の平王の死体をむち打ったという故事による ) 死んだ人の言動行為を非難する。死者に鞭打つ。
    1. [初出の実例]「社会に害毒を流せし悪人に対しては、大に其死屍(シシ)に鞭(ムチウ)って」(出典:裸に虱なし(1920)〈宮武外骨悪人死屍には鞭て)

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故事成語を知る辞典 「死屍に鞭打つ」の解説

死屍に鞭打つ

死体を鞭で打って辱める。亡くなった人を非難することのたとえ。

[使用例] 社会害毒を流せし悪人に対しては、おおいその死屍にうちうって、以て徹底的ようちょうの刑を加うべしである[宮武外骨*裸に虱なし|1920]

[使用例] 筆者自身〈略〉死屍に鞭うつのそしりをあまんじて受けるとも書き添えている[荒正人*漱石・鷗外・龍之介|1954]

[由来] 「史記しょ伝」に出てくる話から。紀元前六世紀、春秋時代の中国でのこと。の国に仕えていた伍子胥は、父と兄を楚の平王に殺され、亡命してという国に仕えることになりました。仇討ちのため、すぐにでも楚と戦いたかった伍子胥ですが、呉の国情が許さず、時機を待ち続けます。そして一六年後、呉軍を率いてついに楚へと攻め込んだ伍子胥は、都を占領。しかし、平王はすでに亡くなっていました。すると伍子胥は、平王の墓を暴き、「しかばねを出し、これを鞭うつこと三百(その死体を引きずり出して、三〇〇回、鞭で打ち)」、積年復讐の念を晴らします。しかし、その行為は旧友からでさえ、あまりにもひどいと非難されたのでした。

[解説] ❶伍子胥のすさまじいまでの復讐の念に、背筋が凍るようなエピソード。その気性の激しさがあだとなり、この後、彼は有能であるにもかかわらず、次第に呉王の信頼を失っていきます。そして、最後は自殺を命じられ、呉の滅亡を予言しながら、死んでいったのでした。❷亡くなった人は何の反論もできませんから、その行為を非難するのは、公平ではありません。その人がよほどのひどい行いをしていた場合か、非難する方が道徳的でない場合に使われる故事成語です。

〔異形〕死者に鞭打つ/しかばねに鞭打つ。

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