殺生石(伝説)(読み)せっしょうせき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「殺生石(伝説)」の意味・わかりやすい解説

殺生石(伝説)
せっしょうせき

人馬や鳥虫が近づくと毒にあてられ死ぬという石。とくに能の『殺生石』でも知られている栃木県那須(なす)郡那須町の那須岳(那須温泉の湯川の谷―大字湯本)にある溶岩のこと。実際にはこの石が有毒なのではなく、付近の硫気孔から硫化水素などのガスが噴出し、そこに近づく昆虫類が多く死んでしまう。伝説では玉藻前(たまものまえ)が白狐(びゃっこ)と化して石となったことになっている。かつて金毛白面九尾の妖狐(ようこ)が天竺(てんじく)から唐(から)を経て日本に渡来して鳥羽(とば)天皇の寵姫(ちょうき)の玉藻前になり、多くの人に害を与えたが、安倍泰成(あべのやすなり)にその正体を見破られ那須野まで逃げてきて隠れる。しかし、狩り出されてついに射殺され石と化してしまう。玄翁和尚(げんのうおしょう)(源翁心昭(げんのうしんしょう))がここを通りかかり、その法力によって石を砕きその霊を成仏させたという。『下学(かがく)集』や『御伽(おとぎ)草子』にもあり、芸能でも謡曲や歌舞伎(かぶき)、大道芸の活(いき)人形などにも扱われて、人々によく知られた伝説である。

[渡邊昭五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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