民蔵分離問題(読み)みんぞうぶんりもんだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「民蔵分離問題」の意味・わかりやすい解説

民蔵分離問題
みんぞうぶんりもんだい

民部、大蔵両省の分離独立をめぐる明治初年の政治問題。1869年(明治2)8月民部、大蔵両省が合併され、大隈重信(おおくましげのぶ)、伊藤博文(ひろぶみ)、井上馨(かおる)ら開明急進派が首脳部を占め、木戸孝允(たかよし)を支持者として両省を兼轄し、広大な権限のもとに急進的な施政を行った。これに対して、地方官からは地方の実情にあわない政策であるとの批判がおこった。大久保利通(としみち)、広沢真臣(さねおみ)ら漸進派の参議らは、こうした地方官などの声を背景に、70年3月ごろより民・蔵省の改革に乗り出した。初め大久保らは木戸を参議に就任させ、彼を通して大隈らを牽制(けんせい)し、あわせて参議陣の強化を図り、民・蔵省を制御しようとしたが、木戸は反対し、逆に大隈の参議登用と両者の兼轄を主張した。そこで6月22日、大久保、広沢副島種臣(そえじまたねおみ)、佐々木高行(たかゆき)の四参議は、辞表を盾に民・蔵省の分離を要求、ついに7月10日、両者の分離が実現した。なお、まもなく大隈も参議に登用され、両派の妥協も成立した。

[佐々木克]

『田中彰編『日本史6 近代1』(有斐閣新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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