英語のフォークテールfolk taleの訳語。民間説話、民譚(みんたん)ともいわれる。本格昔話、動物譚、笑話(わらいばなし)、形式譚の四類型を総括する名称として用いられる。一般に昔話は、複合形式で色彩に富み、叙事の法則に従って語られる。わが国に例をとれば、昔話は婚姻譚、致富譚、妖怪(ようかい)譚に大別される。婚姻譚の主人公は異常誕生児が多く、致富譚は老夫婦が主人公となり、普通は子供がなく、後継者や富を待望する形式が少なくない。動物譚は単一挿話の話で、動物を行為者とした人間社会の葛藤(かっとう)を主題としたもので、呪術(じゅじゅつ)的信仰性はほとんどない。教訓的、道徳的色彩の強い動物寓話(ぐうわ)とほぼ同意語として用いられる。わが国では、この種の物語を表すことばはなく、文献記録も少ない。
笑話も動物譚と同じく、原則として単一モチーフの話である。なかには複合挿話の物語もあるが、それは昔話笑話ともよばれる。内容が笑話で、構造が昔話の形式をとる。笑話の内容は悪ふざけ、極端な愚行、無知な行為であり、多くは狡猾(こうかつ)な者が主人公となり、しばしば恋の冒険がある。昔話が婦人の物語といわれるのに対し、笑話は男話(おとこばなし)ともいわれる。江戸時代には小咄(こばなし)などとよばれ、中国説話などの影響で盛行した。
形式譚は、愚か者の愚行、単なることばの遊戯を主とする「だんだん話」などである。以上、民話に含まれる内容のそれぞれを述べたが、民話は原則として現在なお生きて語られているという特性をもち、過去においても同様な過程をとっていた。そのため相互にモチーフ、挿話の混交がみられる。そのうえ同一内容の物語が神話、伝説、昔話の名でよばれているものもある。
[関 敬吾]
『関敬吾著『民話』(1955・岩波書店)』
民話ということばは,関敬吾の《島原半島民話集》(1935)が初出である。しかし,当時〈昔話〉を術語として確立しようとしていた柳田国男はこれを批判し,1948年《日本昔話名彙》を刊行するにいたって,〈昔話〉という術語が確立された。しかし,49年,木下順二が《夕鶴》を民話劇として発表するにおよんで,〈民話〉が流通するようになった。昔話という術語は,日本においては,本土の資料に基づき,形式,内容ともきびしく規定されている。日本本土内の昔話には〈昔話〉という術語を使うことが学問的にみて正しい。しかしその後,沖縄,奄美,アイヌ人の口頭伝承には昔話に該当しないものがあることが判明してきており,この場合は〈民話〉の語を用いるのがふさわしい。外国の口頭伝承についても同じである。〈民話〉には口伝えという前提があるので,創作民話という表現は,自己矛盾である。民話が含む範囲を具体的にいえば,昔話のほかに世間話,実話が多少口伝えされた伝聞実話,神話・伝説・昔話の一体となった話(沖縄などに多い),歴史的事実のようだが確認できない話などである。
→昔話
執筆者:小澤 俊夫
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…〈民譚〉や〈童話〉もそうである。さらにはまた〈民話〉の語は,今日広くに用いられているが,これはfolktale,すなわち〈民間説話〉の略称である。
[さまざまな特性]
物語そのものが,完結した形式を備えている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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