水銀座(読み)すいぎんざ

改訂新版 世界大百科事典 「水銀座」の意味・わかりやすい解説

水銀座 (すいぎんざ)

中世,伊勢国飯高郡丹生(現,三重県多気郡多気町)産出水銀の特権的な取引に従事した商人団。水銀とその原鉱辰砂は医薬品用,顔料白粉原料等として用途が広く,すでに文武・元明天皇のころから伊勢産水銀の貢納が行われていた。弘仁年間(810-824)には諸国から集まった鉱夫商人で戸数1000から2000軒におよぶ鉱山町が出現したという。鎌倉初期の建久年間(1190-99)に本所の伊勢大神宮の神官と水銀座が争った史料が残されているので,座の成立はおそらく平安時代にさかのぼることが考えられる。また正嘉年間(1257-59)に,内蔵寮に所属し,水銀を貢納する水銀供御人のいたことを確かめうるが,産地の丹生が内蔵寮の所領内にあること,かつて内蔵寮には租税水銀が納められていた歴史から考えて,この水銀供御人と水銀座が一致する可能性は少なくない。丹生の水銀は少なくとも室町時代までは産出されているので,水銀座もおそらくそのころまで活躍していたものであろう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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