江南製造局(読み)こうなんせいぞうきょく(英語表記)Jiāng nán zhì zào jú

改訂新版 世界大百科事典 「江南製造局」の意味・わかりやすい解説

江南製造局 (こうなんせいぞうきょく)
Jiāng nán zhì zào jú

江南機器製造総局の簡称。1865年(同治4)李鴻章によって設立された中国最初の本格的な官営軍事機械工場。1862年設立の上海洋礮(ようほう)局と,63年設立の蘇州洋礮局の一部とを合し,それを上海道台丁日昌が李鴻章の命により購入した旗記鉄厰(アメリカ人ハント商会Thos.Hunt & Co.が上海虹口に所有)に合して設立された。また,曾国藩容閎に命じてアメリカから購入した機械類もここに持ち込まれた。67年には高昌廟鎮に移転し,事業は多方面に拡大した。創設に要した費用は約54万3000両であり,67年からは,上海税関輸入税の2割が経費にあてられた。当初は丁日昌が管理したが,移転後は応宝時,馮焌光らに交替した。江南製造局の組織は,(1)機器厰,鋳銅鉄厰,輪船厰,槍厰,炮厰,火薬厰,練鋼厰などの生産工場,(2)公務庁など管理部門,(3)翻訳館(広方言館)など付属施設から成っていた。製造された武器・軍需物資は,各地軍械所,衙門,軍営に分配された。造船部分は1905年(光緒31)に独立し,江南船塢(ドッグ)と称し,12年には江南造船所となった。その他の部分は17年に上海兵工厰と改められた。
官営工業
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「江南製造局」の意味・わかりやすい解説

江南製造局
こうなんせいぞうきょく
Jiang-nan zhi-zao-ju; Chiang-nan chih-tsao-chü

中国,清末の代表的な官営軍事工場。同治4 (1865) 年李鴻章により上海に設立された。機器,輪送船などの各工場,公務庁などの管理部門,繙訳館 (→広方言館 ) の付属機関から構成され,従業員数約 3000,実際の監督管理には江海関道台の丁日昌があたった。海関洋税の2割をもって経常費としていたうえに官僚による放漫経営も原因して絶えず赤字に陥り,製品の量,質ともに問題があった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「江南製造局」の解説

江南製造局(こうなんせいぞうきょく)

清末,官営の洋式兵器工場。洋式兵器の自給のため,1865年江蘇巡撫(じゅんぶ)李鴻章(りこうしょう)が設立し,銃砲艦船工作機械の製造を行った。

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世界大百科事典(旧版)内の江南製造局の言及

【洋務運動】より

…(1)軍需工場。1865年(同治4),李鴻章は上海に江南機器製造総局(江南製造局)を,南京に金陵機器局を設立し,銃弾,火薬,銃砲などを製造した。また68年には江南製造局が繙訳館を設立し,アメリカ人宣教師フライヤーJ.Fryer(中国名は傅蘭雅)やワイリーA.Wylie(偉列亜力)らを招き,《汽機発軌》《泰西採煤図説》ほか自然科学,技術,歴史,国際法などに関する外国書が翻訳された。…

※「江南製造局」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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