注好選(読み)ちゅうこうせん

百科事典マイペディア 「注好選」の意味・わかりやすい解説

注好選【ちゅうこうせん】

童蒙教訓的な説話集。3巻。1152年以前の成立作者不詳。上巻中国説話,中巻にインド仏教説話,下巻には主に動物を素材とする説話を収める。《今昔物語集》の〈震旦部〉との共通説話が多いことが注目され,《私聚百因縁集(しじゅひゃくいんねんしゅう)》の出典にもなっている。東寺観智院本の他に,別系統の本文を持つ金剛寺本がある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の注好選の言及

【説話文学】より

… 以上に加えて,説話文学に準ずるもの,またはその周辺的作品と見られるものも少なくない。故実家の談話を筆録した《江談抄(ごうだんしよう)》《富家語(ふけご)》《中外抄》系列の作品,神仏の縁起や利生(りしよう)談を収めた絵巻物類,院政期の《注好選(ちゆうこうせん)》以下の童蒙対象の啓蒙的テキスト,《言泉集(ごんせんしゆう)》《転法輪鈔(てんぽうりんしよう)》のごとき説経唱導の資料集などがそれで,これらも説話文学の理解には欠かせないものである。【今野 達】
[インド]
 インドは説話の宝庫であり,世界各国の説話はすべてインドを起源とするという説さえかつて流行した。…

【仏教説話集】より

…その後,これらのあとを追う縁起,往生記,霊験記がつづいている。やや違うのは,11世紀のものらしい印度・中国の仏教説話を漢文で書き集めた《注好選》で,これは,やがて天竺・震旦・本朝の仏教説話を核に,ひろく世俗説話まで網羅しようとする《今昔物語集》31巻が漢字まじり片仮名文で書かれる先導車ともいえる。これら仏教説話集の諸類型のほかに,12世紀の《百座法談聞書抄》,13世紀の《言泉集》など,説経草案というべき唱導集の一群も残っている。…

※「注好選」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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