派閥(読み)ハバツ

デジタル大辞泉 「派閥」の意味・読み・例文・類語

は‐ばつ【派閥】

出身・縁故利害・政治的意見などで結びついた人々が形成する排他的な小集団。特に、自民党などで特定の政治家のもとに結集している議員の集団。「派閥領袖りょうしゅう」「派閥争い」
[補説]自民党の主な派閥(2024年3月現在)
平成研究会額賀派
志公しこう麻生派
志帥しすい(二階派)
( )内は通称
令和5年(2023)、自民党の主要派閥が政治資金パーティーの収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず所属議員に還流していた問題が大きく報じられ、令和6年(2024)1~2月に宏池こうち岸田派)・近未来政治研究会石原派)・清和政策研究会が解散した。
[類語]党派旧派新派分派別派

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精選版 日本国語大辞典 「派閥」の意味・読み・例文・類語

は‐ばつ【派閥】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ある家から分かれ出た家柄。
  3. 家系、縁故、出身校利害関係などによって結ばれ、他と対抗する傾向をもつ人々のつながり。
    1. [初出の実例]「なに派だ、かに派だと、派閥争いのお先棒をかついで」(出典:陣笠(1953)〈辻寛一〉陣笠日記)

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改訂新版 世界大百科事典 「派閥」の意味・わかりやすい解説

派閥 (はばつ)

一般に,出身や政党政派や特殊な利益などを中心にして結びついた仲間を意味する。この意味での派閥は,およそ人の集団において,宗教や学問や芸術の領域にいたるまで形成されるが,とくに政治的集団でその特異な属性は顕著となる。それは,〈公的公式集団の中に形成された私的非公式集団で,閉鎖的な同調性をもち〉(石田雄),〈権力を私的に把握し,あるいは把握せんとして,他者あるいは他集団と対立抗争し,集団成員に対しては私的な庇護の恩恵を与える〉(安田三郎)ものである。しかし現在狭義には,〈派閥〉という言葉は,1955年の結党以来ずっと日本の支配政党である自由民主党の,いわば本質的属性としてほとんど国際的にも認知された用語といえるであろう。

 自民党の派閥が〈権力の私的な把握〉と,〈その内部で“親分”の私的庇護と“子分”の従属〉という典型を形づくった原因は二つある。一つは,1955年の結党に際して導入された総裁公選制であり,もう一つは,それ以前から存在した現行の〈中選挙区・単記制〉の選挙制度である。まず総裁公選制の導入は,党所属の国会議員と地方代議員(のち全党員による予備選挙制導入にまで拡大された)の投票による総裁選出方式の採用によって,党総裁となり政権につこうとする有力政治家(親分)に,なるべく多くの議員・党員を配下に集め,他の有力政治家とその集団を圧倒する必要性を痛感させた。かくて親分は党内の私兵(子分)集めに狂奔する。一方,中選挙区・単記制は,3人区,4人区,5人区で1人に投票しこれを選出する仕組みだから,他政党との戦いであるだけでなく,同一選挙区内の複数の自民党候補どうしの公認争い,当落争いを激化させる。そのため候補者である議員・党員は,それぞれ個別の党有力政治家の支持・援助を求める。それは,総裁争いのために多数の配下・子分を求めている有力政治家の望むところであり,ここに親分と子分,上下二様の利害が一致して,派閥が形成され系列化が進行することになる。こうした親分の庇護は,単に選挙時にとどまらず,子分の日常の政治活動-資金面の援助や政治上の役職・権力の分与に及んでいく。一方,2年ごとの総裁公選では,逆に親分は子分の献身・支援を期待し,子分たちは親分を権力の座に据えるために全力をあげることになるのである。このようにして,親分・子分の構成要員の相互補完関係が確立し,私的集団である派閥は強固に維持・継続されていく。

 これまでの自民党は,この派閥連合政党と呼べるメカニズムによって,自民党の独占で他政党との政権交代のない閉塞(へいそく)状況を,派閥親分間の抗争による総裁交代-政権交代という形で代替してきた。〈擬似政権交代〉と呼ぶべき派閥の効用があったといえよう。しかし,派閥の弊害もまた顕著である。閣僚ポストまで派閥の実勢により分配されている状況は,総裁-政権担当者の統率,指導力を弱化させる。一面,特定派閥が肥大して党の大勢を制すると,私的非公式集団がそのまま公的公式集団の実権を握るという異常事態を生みかねない。総裁公選がなんらの法的規制をも受けず,買収,利益誘導など派閥間の露骨な実力抗争のまま放置され,その結果選ばれる総裁が,ほとんど自動的に一国の最高権力者となる矛盾も指摘できよう。派閥の存在と機能,その功罪は,自民党優位の現代日本政治の大きな問題点といえるであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「派閥」の意味・わかりやすい解説

派閥
はばつ

ある集団のなかで、出身、資格、利害、主張、好悪などを共通にする者が、集団全体の動向に影響を与えるために形成した小集団。とくに政党内の私的な人的結合を、党の合理的な意思決定、実際行動、人材配置を阻害するものとして、派閥とよぶのが一般的である。政党の派閥は、一つの党の枠内における資金や役職などの利得の配分をおもな機能としており、その点で分派とは違う。分派は一定の主張のもとに全体の路線を改変することをねらい、場合によっては分裂をも辞さない小集団をさしている。

 日本の政党や企業における派閥については、前近代的な病理現象としてとらえる見解が有力であるが、管理社会に普遍的な小集団として位置づけ直し、集団全体の活力向上に資する機能を期待する見方もある。政党の派閥としては、自由民主党のそれがよく知られている。自民党の派閥は当初八つのグループ(いわゆる八個師団)から出発し、その後整理されて五大派閥となったが、実力者と政局の変化に応じて増減している。小選挙区制の導入という選挙制度の変更によって派閥はなくなるという見方もあったが、ポスト配分機関としての機能は維持され、凝集力の低下と流動化を強めながらも存続し続けた。

[藤井 正・五十嵐仁]

『石田雄著『現代組織論』(1961・岩波書店)』『居安正著『政党派閥の社会学』(1983・世界思想社)』『西川知一・河田潤一編著『政党派閥――比較政治学的研究』(1996・ミネルヴァ書房)』『中根千枝著『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「派閥」の意味・わかりやすい解説

派閥
はばつ
political faction

政党内部の行動単位であるが,広くは集団内に発生する相互作用の単位。自民党の派閥は特別な意味をもち,結党以来一貫して政権を担当しているが,その強さの秘訣は派閥連合体としての柔軟な組織体質に求められるかもしれない。もともとはポストとカネ,義理と人情相互扶助と連帯感を契機にして結成されているのであるが,政策研究・人材育成機能が発揮され,結果として環境からの挑戦に対応できる柔軟な組織構造を党に持込んでいる。派閥政治の弊害としては,特に人事の不明朗,すなわち政府・党・議会内のポストが適材適所主義ではなく派閥順送りで決定されてしまうことと「見えざる政治」を指摘しておきたい。政権交代の実質や重要法案の運命までもが密室で決まってしまい,開かれた政治は期待できない。

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世界大百科事典(旧版)内の派閥の言及

【ハチ(蜂)】より

…大別して三つのグループにわけることができる。まず第1のグループは広腰(こうよう)類(英名saw fly)と呼ばれ,キバチ,クキバチ,ハバチなどの種類を含んでいる。そのほとんどは食植性で,草木の葉,茎,材などを摂食して成長する。…

※「派閥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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