浮寝(読み)うきね

精選版 日本国語大辞典 「浮寝」の意味・読み・例文・類語

うき‐ね【浮寝】

〘名〙 (「浮き」に「憂き」をかけて用いられることもある)
水鳥が水に浮いたままで寝ること。また水上に舟をとどめて夜を明かすこと。
万葉(8C後)一五・三五九二「海原に宇伎禰(ウキネ)せむ夜は沖つ風いたくな吹きそ妹もあらなくに」
② 心が落ち着かず、安眠できないで横になっていること。
※万葉(8C後)四・五〇七「しきたへの枕ゆくくる涙にそ浮宿(うきね)をしける恋の繁きに」
③ 夫婦でない男女が一時的に契りを結ぶこと。
源氏(1001‐14頃)帚木「いとかう仮なるうきねのほどを思ひ侍るに」
④ ねどころの一定しないこと。
※光悦本謡曲・杜若(1464頃)「ゆふべゆふべのかり枕、宿はあまたにかはれども、おなじうきねのみの尾張
[語誌](1)鴨や鴛鴦などの水鳥が水の上で浮いたまま眠る習性を見て、不安定な、気分の落ち着かないことと考えたところから出た表現。そこから、上陸せずに船中で仮泊する意に用い、旅中の心細い境涯や悲しみを表現したり、恋のため眠れないことをたとえるのに用いたりした。
(2)平安時代になると「憂き」に掛けることが多くなり、つらい独り寝の形象として用いられたり、③のように寝所が一定しないこと、かりそめに寝ることとなって気紛れの情事の意で用いられた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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