アイルランドの劇作家J・M・シングの一幕悲劇。1904年初演。西の果ての絶海の孤島に住むモーリャは、舅(しゅうと)と夫と4人の息子を、ことごとく海にとられてしまう。さらに5人目の息子の訃報(ふほう)を聞き、次の最後の息子も馬に乗って海へ出かけて行く。この息子もまた、という兆しが一幕劇の初めからあり、「みんなこの世を去ってしまった。海はこれ以上、私にどうすることもできやしない」という老女の心境は、古典的な高い悲劇美を示す。アラン諸島の民俗語を詩の領域に高めた傑作。
[菅 泰男]
『山本修二訳『海へ騎りゆく人々』(岩波文庫)』
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