局所的に作用して炎症を治す薬剤。炎症は、病原微生物の感染、打撲や骨折など物理的原因、起炎物質など化学的原因や、痛風のように代謝異常によるもの、各種アレルギー、自己免疫疾患などによっておこる。そのおもな症状は発熱、発赤、腫脹(しゅちょう)、疼痛(とうつう)、かゆみなどであり、これらの症状を除くために全身的に投与されるのが、解熱・鎮痛・消炎剤あるいは抗炎症剤といわれるものである。
ただ単に消炎剤といわれるものは、外用で炎症部位に塗布または貼布(ちょうふ)して用いられる薬剤をさす。従来は収斂(しゅうれん)剤が主であったが、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤、インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症剤の軟膏(なんこう)やクリームが多く使用されるようになった。そして、かゆみ止めや抗アレルギー剤の外用も、この目的で使用される。
収斂剤では硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、酢酸鉛(なまり)の溶液が湿布剤として用いられ、亜鉛華を用いたチンク油もよく使用される。一般用薬ではサリチル酸メチルやカンフルを主薬とした軟膏やクリームがある。そしてもっとも多く用いられているのは、カオリンパップを源とする「ゼノール」などのパップ剤と、これをさらに取り扱いやすくしたプラスター(貼布薬、「トクホン」「サロンパス」「セクール」など)である。これらの主成分はサリチル酸メチル、カンフル、メントール(はっか油)、チモール、抗ヒスタミン剤のジフェンヒドラミンなどである。スティック状の製剤やエーロゾル剤(エアゾール剤、噴霧剤)もある。副腎皮質ホルモン剤の外用は強い抗炎症作用を有するが副作用が強いため、全身作用の少ないものへと開発が進み、軟膏やクリームのほかに、テープとして貼布する剤形もよく用いられるようになった。
[幸保文治]
『入交昭一郎著『抗炎症剤の臨床』(1986・新興医学出版社)』▽『西岡清著『皮膚外用剤の選び方と使い方』(1989・南江堂)』▽『柏崎禎夫編『チャート式 抗炎症剤治療ハンドブック』(1990・メディカルレビュー社)』▽『安倍達・柏崎禎夫・斎藤輝信編『抗炎症剤ハンドブック――病態別処方の実際』(1995・医薬ジャーナル社)』▽『柏崎禎夫著『非ステロイド抗炎症薬』(1997・日本医学出版)』▽『山本一彦編『非ステロイド性抗炎症薬の選択と適正使用』改訂第3版(2002・日本医学出版)』▽『大野雅久著『パップ剤――日本が育んだクスリと文化』(2003・薬事日報社)』
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