二つ以上の異なる成分物質に適当な操作を加えて均質なものを得ること。工業的には,粘稠でない流体(気体および液体)を主とする原料を扱う混合操作をかくはん(攪拌),非常に粘稠なまたは可塑性の物質原料を対象とする場合を捏和(ねつか)といい,固体の粉粒体を主とする原料を扱う場合を固体混合または単に混合と称して区別することが多いが,その区分は厳密なものではない。
均質な混合状態(完全混合状態)とは,混合物の任意個所から採取されたサンプル内の成分割合(濃度)が,混合物全体についてのその成分割合(仕込濃度)に等しい状態をいう。実際には,ある程度のばらつきは不可避であるので,各成分の組成のばらつきが誤差関数にのったとき,混合は完了したものとみなす。図1のa→bまたはa→cに示すように,不完全な混合状態ではサンプルの大きさと採取個所により濃度が異なるから,混合状態(混合度)の定量的な表示には,サンプルの大きさ(容積や質量または含まれる個体数)とサンプル濃度の仕込濃度(あるいは全サンプル濃度の平均値)からのばらつきの程度を示す必要がある。サンプルの大きさは小さくするほど混合状態を細かく厳密に評価でき,極限としては分子の集合状態までを検出することであるが,固体を含む混合物では固形分の粉粒体の大きさと仕込濃度により混合度に限界があり(最良混合度),また工業的にはむしろ実用上の目的から限界値が決まり,サンプルの大きさを過度に小さくする必要はない。たとえばペイントへの着色顔料の混入では色むらに対する肉眼の分解能,薬剤ではアンプル,カプセルあるいは錠剤1個の大きさが一つの目安になる。平均値からのばらつきは,たとえば成分aについての仕込濃度をCa0,サンプル数をN,各サンプル内のa成分濃度をCai(i=1,2,……,N)として,統計的な分散あるいは標準偏差σなどで示される。なお,混合状態を異成分A,Bの接触界面積の大きさ(図1では境界線の長さ)で判定する方法もある。
混合操作による混合の進行過程の単純な例を図1に示す。仕込原料にこのような変形・相対移動(伸縮,剪断,分割,重ね合せ,回転,分散配置など)を反復して与えることにより,成分の配置がより細かく,より均質になる。実際の混合装置内での混合の進行過程は一見複雑であるが,このような単純な移動混合convective mixingの複合繰返し過程と考えてよい。とくに,移動混合作用が多数の成分個体の細かい不規則運動によって継続的に行われる場合を,統計的な混合過程とみなして拡散混合diffusive mixingと称する(図2)。気体分子の熱運動や流体の乱流運動,固体粉粒体の不規則振動運動による混合がそれである。拡散による混合は他の移動混合に比べて混合進行速度は遅いが,細部までの均質化作用が優れている。
図3に混合過程の進行に伴うσの減少の傾向を固体混合の場合について示す。混合速度はσやσ2あるいはその関数値の減少速度として表される。
固体混合では異種固体成分の粉粒体,またはそれに少量の液体成分が加わったものを扱うが,この場合には粒子の密度と大きさの違いにより,重い粒子は重力作用のため,また小粒子は大粒子の間隙を通していずれも下方へ沈降し,そのためつねに混合とは逆の分離作用が働く。したがって,到達しうる最終混合度は混合および分離両作用の動的平衡状態として定まる。さらに粒子間の衝突や摩擦剪断等により粒子の粉砕細分化,ときには逆に付着粗大化が起こり,いずれも混合の進行に影響を及ぼす(図3参照)。
図4に固体混合機の例を示す。原料をスクリューで強制かくはんする方式(図4-a),容器ごと回転して内容原料を回転転倒,落下衝突させて混合する方式(図4-b,c)など種々の装置がある。コンクリートミキサー車は後者の例で,円錐形容器を回転させる。
執筆者:山本 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…性質の異なる粉粒体または液体を混ぜ合わせること。鉱石その他の粉粒体のブレンディングにはやや異なった二つの意味合いと目的がある。その一つは,性質あるいは品質の異なる2種以上の粉粒体を,特定の比率で合一することである。この操作は配合とも呼ばれる。他の一つは,2種以上の粉粒体あるいは品質変動をもつ粉粒体を,より安定した品質をもつ粉粒体に変えることである。この操作は均一化homogenizationとも呼ばれる。…
… バーコフらのエルゴード理論は,確率論にも拡張でき,不変測度をもつマルコフ連鎖には長時間平均が存在し,それが空間平均に等しいという定理が得られる。しかし,このようなエルゴード性は熱平衡状態成立の保証にはならず,A.N.コルモゴロフは,等エネルギー面上のどの領域も,長い時間の間には十分よく混ぜ合わされてしまうという概念(混合という)を導入した。彼はさらに位相空間に分割という考えを導入し,時間がたつにつれ,はじめの分割がいろいろに増えて,最後にはあらゆる可能な分割を全部経験しつくすような力学系を強い混合的な系であるとした。…
…流体や粉末ないしは粒状の固体原料をかき混ぜることで,工学的にはかくはん操作またはかくはん混合操作として単位操作の一つに分類されている。狭義には,流体あるいはあまり多量でない粉粒体を含む流体で比較的粘稠でない原料を対象とする場合をかくはん,これに対して濃厚高分子溶液やグリースから粘土等に至るまでの非常に粘稠な原料を扱う場合を捏和(ねつか)または捏和混練,一方,固体の粉粒体原料を主とする場合を固体混合または単に混合と称して区別する。…
※「混合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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