生物細胞の核分裂の一形式で、2回の連続した核分裂により染色体数が半減するものをいう。卵母細胞や精母細胞が成熟して、卵と精子が形成される過程でみられるので、この場合をとくに成熟分裂ともよぶ。また、半減した染色体数は受精によって卵前核と精前核が融合し、元の数に戻るところから還元分裂ともよばれた。大部分の動植物細胞では、1回目の核分裂の前にDNAは倍化するが染色体の縦裂はおこらないので、対合(ついごう)(互いに接着)した相同染色体がそれぞれ分離して染色体数が半減する。2回目の核分裂では、通常の有糸分裂と同じく染色体は縦裂する。この減数第1分裂は、体細胞で通常みられる有糸分裂と著しく異なるので異型核分裂ともよばれる。減数第2分裂は同型核分裂である。
減数第1分裂に先だつ間期(G1・S・G2期を含む)は、それまで体細胞分裂をしていた細胞が減数分裂細胞に転換するために必要な期間で、前減数分裂期premeiosisとよぶ。この期間に、そのS期でDNAの複製が行われる。動物では生殖細胞、植物では胞子の形成などの準備段階である。これが、G2期を経て減数第1分裂期へ移行する。その核分裂前期は便宜上5期に細分される。細糸期leptoteneでは染色体が非常に細長い紐(ひも)状となるのが観察される。ついで合糸期zygoteneでは、相同の染色糸が側面で対合する。この相同染色糸の接着は正確に染色糸の各相同点ごとにおこり、減数分裂に特有な現象である。この期に相同染色体間で交差がおこりやすいとされている。太糸期pachyteneはそのあと比較的長く続き、対合した二価染色体(2個の相同染色体の対合像)が短縮する。ついで複糸期diploteneに移行すると、対合した相同染色体が部分的に分離し、また、すでに複製されている染色分体の二重性がわかるようになる。その二価染色体はキアズマchiasmaとよばれる部分で結合しているので完全な分離は抑制される。複糸期は、多くの脊椎(せきつい)動物の卵母細胞にとっては成熟期で、卵黄を貯蔵するために1年以上続くものもある。前期の最後は移動期diakinesisとよばれ、染色体の凝縮がさらに進行する。相同染色体は動原体とよばれる特定の構造部位で接し、次の核分裂中期に移行する。二価染色体は四染色分体からなり4個の動原体が存在するが、2個ずつ接着して二染色分体として両極に移動する。極に達した染色体は完全な間期の核の様相を示さず、そのまま第2分裂前期へ移行する。この間DNA合成はおこらない。その後の減数第2分裂は通常の有糸分裂の経過をたどり、二染色分体は縦裂して両極に移動し、結果としてn個の染色体をもつ4個の核となる。
花粉の場合は、花粉母細胞の減数分裂で4個の花粉ができる。精母細胞からも同じく四つの精細胞がつくられ、それぞれ成熟して精子となる。一方、植物の雌しべの胚嚢(はいのう)では胚嚢母細胞が減数分裂を行い4細胞となるが、その1細胞が胚嚢に成育する。また、動物の卵母細胞は減数第1分裂で極端な不等分裂を行い、極体とよばれる小細胞を放出する。第2分裂で、卵母細胞はもう一つの極体を放出するとともに先の極体も2分裂するので、結果として極体3個と1個の成熟卵ができる。
[酒井彦一]
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…したがって動物の生殖細胞(卵・精子)および高等植物などで胞子ができる過程では染色体数を半減させる段階がなければならない。この染色体数の半減を伴う分裂は生殖細胞または胞子ができる最後の2回の分裂でみられ,とくに減数分裂と呼ばれている。 細胞分裂は核分裂karyokinesis(またはmitosis)と細胞質分裂cytokinesisの二つの過程からなっている。…
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