減胎手術(読み)げんたいしゅじゅつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「減胎手術」の意味・わかりやすい解説

減胎手術
げんたいしゅじゅつ

多胎妊娠において、妊娠初期(通常は妊娠10週前後)に母子の安全性を考慮して一部胎児中絶する手術。減数手術ともいう。手技としては、超音波画像を手がかりに中絶する特定の胎児の胸腔(きょうくう)内に塩化カリウムを注入し心停止させる方法が多くとられる。中絶により死亡した胎児は融解しそのまま子宮に吸収される。排卵誘発剤胚移植による体外受精をはじめとする近年の不妊治療生殖補助医療)の進歩にともなって多胎妊娠は増加傾向にあり、それと同時に複数の胎児を減らすケースが報告されるようになった。

 減胎手術の是非については、対象を三胎あるいは四胎以上の妊娠の場合とするなどの議論や、法的規制の必要性、遺伝子診断も含めた倫理的問題などについても多くの議論がある。しかし現状の母体保護法では、人工妊娠中絶に関する規定はあるが、減胎手術についての規定はない。

 2000年(平成12)に厚生労働省の厚生科学審議会が減胎手術を原則禁止とする報告をまとめたが、多胎妊娠の予防措置を講じたにもかかわらず、やむを得ず多胎となり母子の生命健康に危険が及ぶ場合は例外的に認めることとされた。日本母性保護産婦人科医会は、多胎の減胎手術に限り中絶を認めるとする法の整備を提言したが、法制化には至っていない。

 減胎手術は、母体の安全をはかるためなどの理由があるとしても、あくまでも宿った生命の一部を失わせる手技であり、生命倫理の問題を避けて通ることはできない。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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