渡辺直己(読み)わたなべなおき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「渡辺直己」の意味・わかりやすい解説

渡辺直己
わたなべなおき
(1908―1939)

歌人。広島県呉(くれ)市生まれ。広島高等師範学校卒業。呉市立高等女学校教諭となる。1935年(昭和10)『アララギ』に入会土屋文明(ぶんめい)に師事。37年日中戦争に陸軍少尉として応召、39年天津(てんしん)で戦死した。その従軍作品は、戦う知識人の思想的苦悩を鋭敏な感覚と具象的な把握によって表現したものとして注目され、のちのちまで深く広い影響を与えた。遺歌集『渡辺直己歌集』(1940)がある。

[岡井 隆]

 涙拭ひて逆襲し来る敵兵は髪長き広西学生軍なりき

『『渡辺直己歌集』(『現代短歌全集8』所収・1980・筑摩書房)』『米田利昭著『戦争と歌人』(紀伊國屋新書)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「渡辺直己」の解説

渡辺直己 わたなべ-なおき

1908-1939 昭和時代前期の歌人。
明治41年6月4日生まれ。広島県呉市立高女教諭。昭和10年「アララギ」にはいり,土屋文明に師事。12年応召して中国大陸各地を転戦。「照準つけしままの姿勢に息絶えし少年もありき敵陣の中に」など,写実的な戦争詠で注目されたが,昭和14年8月21日河北省天津で戦死。32歳。15年遺歌集「渡辺直己歌集」が刊行された。広島高師卒。

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