改訂新版 世界大百科事典 「渡辺順三」の意味・わかりやすい解説
渡辺順三 (わたなべじゅんぞう)
生没年:1894-1972(明治27-昭和47)
歌人。富山市生れ。父の死により1907年富山中学を中退して上京,家具屋の小僧となり,かたわら作歌を始め,14年窪田空穂の《国民文学》同人となる。一方,石川啄木,大杉栄,幸徳秋水などを読み,《種蒔く人》に接近し,しだいに左傾する。肺患をおし,印刷屋,古本屋などで生計をたてながら,22年社会主義文芸誌《シムーン》,25年口語歌誌《芸術と自由》,28年新興歌人連盟,29年プロレタリア歌人同盟にそれぞれ参加,その中心となる。戦後は新日本歌人協会を推進した。24年大喀血のあとの歌〈ひび入れる瀬戸のうつわのはかなさを心に持ちて堪うべくもあらず〉を含む処女歌集《貧乏の歌》(1924),自伝《烈風の中を》(1971)などがある。
執筆者:満田 郁夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報