気体,液体,固体が溶媒に溶けて均一な混合物である溶液となる現象を溶解という。たとえば空気が水に溶け,アルコールが水に溶け,食塩が水に溶けるなどが溶解の実例である。溶解の結果として生じた溶液にはイオン性のもの(電解質溶液)と非イオン性のものとがある。イオン性の溶液中では溶解した溶質は陽イオンと陰イオンとに解離している。たとえば塩化ナトリウムが水に溶けるとナトリウムイオンNa⁺と塩化物イオンCl⁻とになる。非イオン性の溶液中では溶質は,分子の状態かまたは分子が二つ以上集まった会合分子の状態で存在している。たとえば空気が水に溶解したさいには酸素分子O2,窒素分子N2として溶けている。二酸化炭素のような物質は水に溶解してその大部分は分子状で存在しているが,その1%程度が
CO2+H2O⇄H⁺+HCO3⁻
のようにイオンに解離している。これは物質が溶けてその一部分が水と反応し,化学変化を起こしてイオンに解離する例である。アンモニアのような気体が水に溶解する場合も,その一部分が水と反応して
NH3+H2O⇄NH4⁺+OH⁻
のようにイオンが生ずる。二酸化炭素水溶液は弱い酸性であり,アンモニア水溶液は弱いアルカリ性である。溶解という現象が起きるさいには,いろいろな物理的変化,化学的変化が伴う。その変化は,(1)熱力学的変化(吸熱,発熱など),(2)電気的変化(イオン解離など),(3)化学変化(たとえば気体の発生,色の変化,イオン生成,酸化還元,錯形成など)に分けられる。固体の溶解が進行する速さは,温度や溶質の表面積や,かきまぜの程度により影響を受ける。これらの影響を受けるということは溶解のメカニズムに関係している。すなわち,固体が溶解するさいには,まず固体の表面において溶媒との接触や衝突が行われる。その接触や衝突の頻度が多いほど溶解は速くなるはずである。頻度は温度,溶質の表面積,かきまぜの程度によっている。速く溶解させるために系の温度を上げたり,溶質を細かく砕いたり,そしてかきまぜたりするゆえんである。
執筆者:橋谷 卓成
金属を加熱して融点以上の温度にし,固相から液相に変える操作を溶解という。金属の溶解に要する熱量は,固体金属の比熱,変態熱,溶解潜熱,液体金属の比熱から計算される。溶解では金属の精錬,合金組成の調整,温度の制御が目的である。活性な金属の溶解に際しては雰囲気および容器との反応を防止しなければならない。次におもな金属についての溶解と溶解炉を述べる。(1)高融点金属 チタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,モリブデンなどの溶解はエネルギー集中度が高くて高温が得られ,雰囲気調整のできる炉で,鋳型に水冷銅を使用する真空アーク溶解炉,電子ビーム溶解炉などで行われている。(2)超合金および高合金鋼 高度の品質と信頼性が要求される高温での品質が重要な耐熱材料,工具鋼や軸受鋼などの耐用寿命が重要な材料は真空誘導溶解炉,真空アーク溶解炉,エレクトロスラグ再溶解炉,プラズマアーク溶解炉などで溶解されている。(3)普通鋼および低合金鋼 雰囲気や耐火物に特別の考慮を払う必要がないので大気中で溶解される。精錬炉としても使用できる直接アーク溶解炉が最も広く用いられている。溶解材としての鋼屑を選択する必要はない。これに対して,誘導溶解炉は温度制御などは容易であるが,精錬炉として使用できないので溶解材が制限される。日本ではほとんど使用されていない平炉も外国では使用している。(4)鋳鉄 鋼に比べて炭素含有量の多い鋳鉄は,融点も低く,溶融金属も取り扱いやすいので鋳物の製造に使用されている。鋳鉄の溶解炉としてはキュポラが最も多く使用されている。ほかに誘導溶解炉,直接アーク溶解炉,重油燃焼炉,反射炉なども使用されている。ねずみ鋳鉄,球状黒鉛鋳鉄,可鍛鋳鉄,合金鋳鉄などの溶解目的に応じて使い分けられている。(5)銅合金 ガスまたは重油燃焼るつぼ炉,反射炉,誘導溶解炉,間接アーク溶解炉などによって溶解される。銅合金の溶解では溶融金属に溶け込むガス成分を少なくすることが重要である。(6)アルミニウム合金 直接燃焼加熱炉,間接燃焼加熱炉または電気抵抗加熱るつぼ炉,誘導溶解炉などによって溶解される。溶融金属に溶け込んだ水素ガスを除去するために塩素ガス処理,非金属介在物除去のためにフィルタリングをすることもある。(7)マグネシウム合金 ガスまたは重油燃焼加熱るつぼ炉,誘導溶解炉などによって溶解される。マグネシウム合金は酸化されやすいため,フラックスを使用して酸化を防止することが重要である。塩素ガス処理によって水素ガスと非金属介在物の除去を行う。(8)亜鉛合金 燃焼加熱るつぼ炉,誘導溶解炉などで溶解され,おもにダイカストに使用される。るつぼは鋳鉄,可鍛鋳鉄などのものが用いられる。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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気体、液体、固体である物質(溶質)が、ほかの液体や固体と混合して均一な相の混合物、すなわち溶体solutionをつくること。液体の溶体は溶液というが、固体ならば固溶体という名でよぶ。通常、気体どうしの混合は溶解とはいわない。固体を加熱して液体とする「融解」とは別のことである。
[山崎 昶]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…物質が溶媒を吸収してふくらむ現象で,高分子物質の溶解の際にみられることがある。高分子物質は,固体状態ではそれを構成している高分子鎖の間の相互作用が強いが,これを溶媒中に浸すとその高分子鎖の間に溶媒分子が入り込んでゲル状にふくれあがる。…
※「溶解」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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