滝の白糸(読み)タキノシライト

デジタル大辞泉 「滝の白糸」の意味・読み・例文・類語

たきのしらいと【滝の白糸】[戯曲]

戯曲泉鏡花小説「義血侠血」を脚色したもの。明治28年(1895)川上音二郎一座により浅草座初演。滝の白糸とよばれる水芸人と向学の青年村越欣也の悲恋物語。新派の代表狂言の一。

たき‐の‐しらいと【滝の白糸】

滝の糸」に同じ。
「春来れば―いかなれや結べどもなほあわに見ゆらむ」〈拾遺・雑春〉
[補説]戯曲名別項。→滝の白糸

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「滝の白糸」の意味・読み・例文・類語

たき【滝】 の 白糸(しらいと)

① 滝の水が白く流れ落ちる様子を白糸にみたてていう語。
※拾遺(1005‐07頃か)雑春・一〇〇四「春くれば滝のしらいといかなれや結べども猶あわに見ゆらん〈紀貫之〉」
② ①を模して行なう水芸の名。

たきのしらいと【滝の白糸】

新派脚本。泉鏡花の新聞小説「義血侠血」を花房柳外が脚色。明治二八年(一八九五)川上音二郎一座により浅草座で初演。滝の白糸と呼ぶ水芸人と向学の青年村越欣也をめぐる悲恋物語。新派の当たり狂言の一つ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「滝の白糸」の意味・わかりやすい解説

滝の白糸
たきのしらいと

泉鏡花の初期の短編小説『義血侠血(ぎけつきょうけつ)』をもとにした新派戯曲。原作は1894年(明治27)11月『読売新聞』に「なにがし」の署名で連載。翌年12月、東京・浅草座で川上音二郎一座が根本凌波・広岡柳香の脚色により『滝の白糸』の外題(げだい)で初演。以後この外題が踏襲されている。金沢の水芸の太夫(たゆう)、滝の白糸は、馬丁をしていた村越欣弥(むらこしきんや)と知り合い、学資を送り続けるが、金の調達に困り、ようやく得た300円を強奪されて錯乱し、強盗殺人を犯す。法廷で対面した検事は、3年間1日も忘れたことのない欣弥その人だった。白糸は欣弥の説得に、否定していた罪を認めて自らの命を絶ち、欣弥も自殺する。初演の白糸は藤沢浅二郎(川上の欣弥)で、その後喜多村緑郎(きたむらろくろう)や河合武雄(かわいたけお)が演じ、脚本も種々あるが、1933年(昭和8)8月、東京劇場で花柳(はなやぎ)章太郎が初役で演じるに際し、初めて水芸の舞台面を取り入れ、以後これが一つの見せ場になっている。溝口健二監督、入江たか子岡田時彦主演の映画化(1933)は、サイレント映画の傑作として有名。

[土岐迪子]

『『義血侠血』(『明治文学全集21 泉鏡花集』所収・1966・筑摩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「滝の白糸」の解説

滝の白糸

1933年公開の日本映画。監督:溝口健二、原作:泉鏡花による戯曲『義血侠血』、脚本:東坊城恭長、増田真二、館岡鎌之介、撮影:三木茂。出演:入江たか子、岡田時彦、滝鈴子、見明凡太郎ほか。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android