漁師(読み)リョウシ

デジタル大辞泉 「漁師」の意味・読み・例文・類語

りょう‐し〔レフ‐〕【漁師】

漁をして暮らしている人。
[類語]漁民漁夫海人海女網元鵜匠

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「漁師」の意味・読み・例文・類語

りょう‐し レフ‥【漁師】

〘名〙 (「りょう」は「猟」との混同により生じた「漁」の慣用的な読み) 漁をする人。海・川・沼・湖などで魚介類をとってくらしている人。漁夫。猟師
本福寺跡書(1560頃)生身御影様大津浜御著岸之事「真野のれうし、かただにゐそめてれうをし、わたしもりをす」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「漁師」の意味・わかりやすい解説

漁師
りょうし

魚貝類の漁労を職業とする者。10世紀に海女(あま)などとともに専業化したが、かならずしも漁業は製塩業、廻船(かいせん)業、商業などと分化してはいなかった。しかし、13世紀には共同利用のための漁場が成立し、14世紀には漁場と結び付いた共同体としての漁村が成長した。漁法は内水面・沿岸の釣り、簗(やな)・網によるものの、半農半漁が多かった。この漁師にも、耕地や網といった生産手段をもたずに集団や個人の売買・譲与の対象となった隷属的なものと、これとは対照的に、生産手段をもっていて独自な集団をつくっていた自営的なものの2種類がみられた。また、このほかに網主(網元)と網子、船主と船子といった従属関係のものも存在した。17世紀になって、ようやく漁業は独立した産業となり、引網、敷(しき)網、刺(さし)網、旋(まわし)網、建(たて)網といった網の発達と、漁場(ぎょば)制度(浦浜制度)の確立によって、商品生産として発展し、多数の協業を必要とする漁具・漁法(大型の定置網地引網と釣延縄(はえなわ)漁法など)が始められ、資本制的諸関係が早くから展開していた。したがって、漁師の生活と経営は、個別の自家労働力によるものと、共同経営(総百姓によるものと、そうではなく任意の組合せによるもの)のものと、多数の労働力を導入した個人的な大経営の三つとなった。この大経営に網主・船主が網子・船子を雇用する形態があった。ここでは漁師はもはや漁夫というべき前貸しや小作によるものとなった。漁獲物の分配も諸経費を差し引いて7対3から4対6というものであった。都市の魚市場では網主からの出荷が主であった。19世紀後半になると沿岸漁業から沖合漁業へと進み、新しい定置網漁法と一部に遠洋漁業が始められた。20世紀になって小型発動機船が漁船に採用されると、漁業も漁師の生活環境も大きく変化した。網も麻から木綿・ラミー・マニラ麻、そして第二次世界大戦後は化学繊維となった。

 漁村は近世以来の共同体的な権利が漁業権として保障されており、依然として内水面・沿岸または沖合いの零細あるいは小規模な漁師漁業と、多数の漁師を基盤とする共同組織のやや大きい規模のものが主体である。しかし、中規模または大規模の企業でも近代化はかならずしも進んではいない。船主・網主が企業主となり、従業者は地元の農家や漁家から旧慣によって雇い入れ、近代的な労資関係よりは、むしろ古い身分の従属関係が残っているといえる。今日でも漁師・漁夫は半農半漁が多い。農用肥取漁業といった農民の漁民化も目だち、渡りの旅漁師も少なくない。しかし、漁業は季節的なものであるから、漁期の切り替えごとに漁場や漁船を移動している。小船での零細経営・自家経営者も、網主・船主に雇用される純粋の賃金労働者となることも多い。しかし、最低賃金は保障されるようになったし、農村の親方・子方関係よりは自由である。

 漁師の家長または後継者は自家経営を引き継ぐが、二、三男出稼ぎの純労働者となっている。戦後は1949年(昭和24)の「漁業法」、翌年の「漁港法」によって規制されたが、地方市場が広く存在しているので、漁村はその経済的役割を持続している。近世以来の漁村を軸として漁業協同組合が成立し、水産資本に対抗して市場への集荷・出荷など漁業活動の単位となっている。今日の職業分類では、漁夫・網漁夫などは漁夫とあり、手釣り漁師だけが漁師となっている。

 漁師は古くから漁の神に恵比寿(えびす)様、海の神の竜王様、船の守り神の船霊(ふなだま)様を信仰し、それぞれに独特の漁業儀礼をもっている。

[遠藤元男]

『羽原又吉著『日本漁業経済史』全4巻(1952~55・岩波書店)』『日本常民文化研究所編『日本水産史』(1957・角川書店)』『『漁民の社会と生活』(『桜田勝徳著作集2』1980・名著出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「漁師」の解説

漁師
〔浄瑠璃〕
りょうし

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
桜田治助(3代)
初演
嘉永1.5(江戸・中村座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

普及版 字通 「漁師」の読み・字形・画数・意味

【漁師】ぎよし

漁人。

字通「漁」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の漁師の言及

【猟師】より

…野獣を捕獲する人を意味するが,日本の中世には漁業を営む人にもこの文字をあて,いずれも〈りょうし〉と呼んだ。両者は近代まで混用されており,区別する必要がある場合は,野獣を捕る者を狩人,川魚漁を川立ち,海魚・湖魚を捕獲する人を漁師または漁人といっていた。九州では〈りゅうし〉と発音して山猟をする者を区別し,あるいは山人(やまと)という。…

※「漁師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」