火成岩体(読み)かせいがんたい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「火成岩体」の意味・わかりやすい解説

火成岩体
かせいがんたい

火成岩のつくる地質体の総称。広義にはマグマ噴出によって形成される火山体をも含むが、普通はマグマが地層の中に貫入して形成する岩石体、すなわち貫入岩体のことをいう。地質調査によって描き出される火成岩体の形状や規模はきわめて多様であるが、それらはほぼ次のように分類、命名されている。

(1)岩脈 地層の構造と大きな角度で斜交した板状の岩体。一般には板の方向が垂直に近いものをいう。火山の地下には火道を中心として放射状に走る岩脈群ができることが多い。また、マグマの上位の岩石の陥没によって、環状の岩脈ができることもある。

(2)シルsill 地層に平行に貫入した板状の岩体。玄武岩など比較的粘性の低いマグマはシルになりやすい。

(3)岩床 地層の構造にかかわらず、ほぼ水平に貫入した板状の岩体。したがって、岩床はシルであることも岩脈であることもある。これらの板状岩体には、しばしば柱状節理が発達している。柱の伸びの方向は板の方向に垂直になる。これはマグマと母岩との接触面である冷却面に節理が直角に生じるためである。

(4)ラコリスロポリス ラコリスlaccolithは餅盤(べいばん)ともいう。地層の構造に調和的な点はシルと同じだが、上位の地層を持ち上げているため、ドーム状の形をなす。一方、下位の地層を押し下げて、皿のような形をなすものはロポリスlopolithという。これには大規模なものが多い。

(5)ボス、ストック、バソリス 地層の構造とは不調和で、しかも板状でない貫入岩体。比較的小さくて、水平断面がほぼ円形のものをボスboss、不規則形のものをストックstock(岩株(がんしゅ))という。これらに対し、規模の大きな巨大貫入岩体をバソリスbatholith(底盤(ていばん))という。

[橋本光男]

『久城育夫・荒牧重雄・青木謙一郎編『日本の火成岩』(1989・岩波書店)』『山崎貞治著『はじめて出会う岩石学――火成岩岩石学への招待』(1990・共立出版)』『久城育夫・荒牧重雄編『火成岩とその生成』(1991・岩波書店)』

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