翻訳|meltdown
原子炉内の冷却水喪失などにより、高温となった核燃料が溶け落ちる重大な事故で「メルトダウン」とも呼ばれる。2011年3月11日発生の東京電力福島第1原発事故では1~3号機で電源喪失により冷却機能が失われ、炉心溶融が起きた。当時の経済産業省原子力安全・保安院は炉心溶融が進んでいる可能性を事故発生翌日にいったん認めながらも、その後あいまいな説明を行い、同年6月になって炉心溶融が早くから起きていたとの解析結果を公表した。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
原子炉中の炉心が冷却手段を失い、過熱して破損・溶融すること。燃料棒とこれを支える構造物、制御棒などが集まる原子炉の中心部分を炉心とよび、ここでは大量の熱(運転時には核分裂による熱、運転停止後にはしだいに減少する崩壊熱)が発生している。これらの熱は冷却水を循環させて除去されているが、なんらかの理由でこの冷却機能が失われ、発生する熱によって炉心温度が上昇し、破損・溶融に至る事故が炉心溶融である。軽水炉における典型的な例は、配管などが破断して炉内の冷却水が外部に流出し、炉内水位が下がって炉心が露出して、さらに緊急炉心冷却装置(ECCS:Emergency Core Cooling System)なども有効に作動しなかった場合に起こる。このような事故を冷却材喪失事故(LOCA:Loss of Coolant Accident)とよぶ。炉心が露出して、ジルコニウム合金製の燃料棒被覆管の温度が1200℃を超えると、ジルコニウムと水が反応して大量の水素が発生すると同時に被覆管がもろくなり、その一部の破損が進行する。約1850℃ではジルコニウムが溶融、約2850℃で燃料の二酸化ウランペレットも溶融し、炉心全体が溶けた状態で原子炉圧力容器の底に落下する(メルトダウン)。溶融物は高温のため、原子炉圧力容器の底を貫いて格納容器の底へと落下する(メルトスルー)。落下物がここでも冷却されなければ、さらに格納容器の底を貫いて地中深くもぐり、地下水と反応して水蒸気爆発を起こすなどといわれているが、実例はなく未実証である。溶融炉心が地中深くもぐり地球の反対側に出てしまうというブラック・ユーモアを込めて、この事故をチャイナ・シンドロームとよぶこともある(1979年に公開された原子力発電所を舞台とした映画『チャイナ・シンドローム』で、アメリカの原子炉でメルトスルーが起こった場合、溶融炉心が地球の反対側の中国まで達するという意味で使われた造語)。
2011年(平成23)3月の東北地方太平洋沖地震の際に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故では、地震・津波により外部からの電源が断たれ、非常用ディーゼル発電機も浸水したため、冷却水を循環させるポンプを動かすための交流電源が失われた。このため炉内の温度・圧力が上昇、ついには冷却水が蒸気となって原子炉(圧力容器)から吹き出し、炉内の水位が低下して炉心溶融に至った。発生した水素は上昇して原子炉建屋(たてや)上部にたまり、電気火花などに引火して、次々と水素爆発が起こった。溶融した炉心は、その後は冷えて固まり(固化物を炉心デブリとよぶ)一部は格納容器の底に、一部は原子炉圧力容器の内部にあるとされている。炉心デブリはきわめて強い放射線を出しているため、取り出すには事故発生後30~40年はかかるといわれている。
[舘野 淳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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