改訂新版 世界大百科事典 「炎光光度法」の意味・わかりやすい解説
炎光光度法 (えんこうこうどほう)
flame photometry
物質を炎の中に入れると,それを構成する原子や原子団が炎の熱で励起され,発光する。この発光スペクトルを炎光スペクトルといい,これを解析して主として金属元素を分析する方法を炎光分析flame analysisという。炎光分析の手法としては,(1)液状の試料を炎の中に噴霧し,このとき得られる炎光スペクトルの中から各元素に固有の波長の光を選び出し,その強度を電気的に測定して元素の定量分析を行う炎光光度法と,(2)試料を直接炎の中に入れて,肉眼あるいはコバルトガラスを通して観察したり,簡単な直視分光器を利用して元素の定性分析を行う方法(〈炎色反応〉の項参照)とがある。
炎光光度法において,特定の波長の光の選定に分光器を利用する方法を炎光分光光度法,フィルターを使用する方法を炎光濾光(ろこう)光度法または単に炎光光度法(狭義)という。炎光濾光光度法はアルカリ金属元素,アルカリ土類金属元素の迅速な分析に向いているが,他の元素の分析には難がある。炎光分光光度法は,より広範な元素に適用できる。炎光光度法で用いられる炎光光度計は,基本的には試料溶液を霧状にするための噴霧器と,炎を得るためのバーナー(両者が一体となった噴霧バーナーが多い),および選光部(分光器,フィルター),測光部(光電子増倍管)から成る。使用される炎としては酸水素炎,酸素アセチレン炎が代表的である。歴史的には,R.W.ブンゼンとG.R.キルヒホフがこの方法の基本を確立し,1860年にセシウムを,翌61年にルビジウムを発見している。現在では医学,水汚染の監視をはじめとする環境化学その他広い分野で利用されている。
執筆者:不破 敬一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報