無心所着(読み)ムシンショジャク

デジタル大辞泉 「無心所着」の意味・読み・例文・類語

むしん‐しょじゃく〔‐シヨヂヤク〕【無心所着】

和歌で、一句一句関連のないことをいい、まとまった意味をなさない歌。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「無心所着」の意味・わかりやすい解説

無心所着 (むしんしょぢゃく)

和歌,連歌俳諧の用語。心の着く所がない意。《万葉集》巻十六に〈無心所着歌二首〉として見える〈吾妹子(わぎもこ)が額に生ふる双六(すぐろく)の牡牛(こといのうし)の鞍の上の瘡(かさ)〉ほか1首が初見。各句は連想によってつながるが,全体としては意味をなさない歌。中世の歌論では〈歌病(かへい)〉とされ,順徳院の《八雲御抄(やくもみしよう)》に〈たゞすゞろ事也〉,また〈大かたはざれよめる事やらむ〉などとある。連歌では,心敬の《ささめごと》に〈月やどる水のおもだか鳥屋(とや)もなし〉などを〈無心所着〉の例句として挙げ,〈此姿おほく聞こえ侍り〉と記す。俳諧では岡西惟中談林俳諧特質を〈無心所着〉性に求め,〈すべて歌・連歌においては,一句の義明らかならず,いな事のやうに作り出せるは,無心所着の病と判ぜられたり。俳諧はこれにかはり,無心所着を本意とおもふべし〉(《俳諧蒙求》)と,積極的にこれを肯定した。貞門が〈俳諧歌〉の系列にあるとすれば,談林は〈無心所着歌〉の系統を引くといえるであろう。
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