日本大百科全書(ニッポニカ) 「無防備都市(映画)」の意味・わかりやすい解説
無防備都市(映画)
むぼうびとし
Roma citta aperta
イタリア映画。ロベルト・ロッセリーニ監督の初期ネオレアリズモの傑作。1943年ドイツ軍ローマ撤退とともに撮影が始められ、資金不足、フィルム等の資材不足を補いつつ、イタリア解放の45年に完成、公開された。ドイツ占領下のローマで、ゲシュタポはレジスタンスの指導者を捕らえようと策略を巡らす。指導者は恋人の踊り子に裏切られ、司祭(アルド・ファブリツィ)に助けを求めるが、ともに捕らえられて拷問(ごうもん)で死に、司祭も銃殺される。彼らに協力するレジスタンスの女(アンナ・マニャーニ)も路上で撃ち殺される。非人間的な行為を容赦しない激怒の念が、現実に肉迫するロッセリーニのまなざしによって、長いショットの撮影法を生み出した。これは次の『戦火のかなた』(1946)とともに、ロケーション本位、現実の人間(非職業俳優)を重要視する方法にも通じており、映画表現に新しい核心を加えた作品であった。日本公開は1950年(昭和25)。
[鳥山 拡]