牧羊城遺跡(読み)ぼくようじょういせき(英語表記)Mù yáng chéng yí zhǐ

改訂新版 世界大百科事典 「牧羊城遺跡」の意味・わかりやすい解説

牧羊城遺跡 (ぼくようじょういせき)
Mù yáng chéng yí zhǐ

中国,遼寧省大連市旅順区南西の老鉄山西麓にある戦国時代から漢代にかけての古城址。前漢代にこの地に置かれた遼東郡沓氏県治に比定されている。1912年に浜田耕作が一般調査と部分的な小発掘を行っているが,28年になって東亜考古学会の原田淑人らによって本格的な発掘調査が行われた。平面長方形の南北約120m,東西約80mの城址で,城壁の基底部に大小の石塊を置き,その上に土壁を築く。城内は平たんで,建築遺構の残りと思われる石畳礎石らしいものが発見されている。城内出土の遺物には,青銅製の鏃,帯鉤,明刀銭,半両銭,五銖銭,鉄製の鏃・環頭刀子・斧,陶器類の壺・甕・豆(とう)などのほか,瓦類,玉器,石製品もある。牧羊城は,石器時代の遺跡を破壊して構築されているために,石器時代の石斧,石庖丁石錘,陶器も発見されている。牧羊城付近の丘陵には,貝墓(墓壙内に木槨をつくり,そのまわりにカキなどの貝殻をつめた墓),石墓(貝墓と構造は同じで,貝殻のかわりに割石をつめた墓),木槨墓,甕棺墓などの墓が分布している。これらは,戦国時代から漢代にかけての遺構で,壺,盤,豆などの陶器類,鏡,遼寧式銅剣,斧,鏃などの青銅製品,斧,鍬,収穫用具などの鉄製品が副葬品として出土している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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