猩猩(読み)ショウジョウ

デジタル大辞泉 「猩猩」の意味・読み・例文・類語

しょう‐じょう〔シヤウジヤウ〕【××猩】

オランウータン別名
想像上の動物。オランウータンに似るが、顔と足は人に似て髪は赤く長く垂れ、よく酒を飲むという。
酒の好きな人。大酒飲み
能面の一。童子の顔を赤く彩色した面。「猩猩」などに用いる。
歌舞伎隈取くまどの一。薄い赤地にまゆや目の下などを紅でくまどるもの。
[補説]曲名別項。→猩猩
[類語]類人猿ゴリラチンパンジーオランウータン

しょうじょう【猩猩】[謡曲]

謡曲五番目物庭訓抄ていきんしょうなどに取材孝行の徳により、富貴となった唐土高風の前に猩猩が現れ、酒をくみ交わして舞をまい、くめども尽きない酒壺を与える。
に取材した長唄地歌一中節などの曲。

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精選版 日本国語大辞典 「猩猩」の意味・読み・例文・類語

しょう‐じょうシャウジャウ【猩猩】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. オランウータン〔博物図教授法(1876‐77)〕
    2. 想像上の怪獣。猿に似て体は朱紅色の長毛でおおわれ、顔はヒトに、声は小児泣き声に似て、人語を解し酒を好むという。
      1. [初出の実例]「言而不行何異猩猩」(出典:秘蔵宝鑰(830頃)中)
      2. 「ふだん猩々(シャウジャウ)のごとく酔て暮し」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)
      3. [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕
    3. 酒や酢などの香に集まるハエ幼虫。蠁子(さし)
      1. [初出の実例]「酒の香に付く小虫を猩々と云ふは何に事そ」(出典:壒嚢鈔(1445‐46)六)
    4. 能面の一つ。妖精の少年をあらわす。赤く彩色されている。
      1. 猩猩<b>[ 一 ]</b><b>④</b>〈奈良県天川社蔵〉
        猩猩[ 一 ]〈奈良県天川社蔵〉
    5. 芝居の役者の隈取(くまどり)の一つ。の顔のように赤くいろどるもの。〔劇場新話(1804‐09頃)〕
    6. ( が酒好きとされるところから ) 大酒を飲む人。酒豪。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「そんな猩々さんはせうちうのはうが柄にあってる」(出典:苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉一)
    7. ( これをかぶるとのように頭が赤くなるところから ) 疱瘡(ほうそう)の病気をした子どもの頭に、呪いとしてのせる紅木綿の手拭。
      1. [初出の実例]「出たはいの・猩々くさいだんではない」(出典:雑俳・削かけ(1713))
      2. 「門に棄てたる猩々(シャウジャウ)も、涙の種の笑ひ顔」(出典:浄瑠璃・太平記忠臣講釈(1766)七)
    8. しょうじょうぎく(猩猩菊)」の略。〔俳諧・毛吹草(1638)〕
    9. 梅ぼしをいう俗語。
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 謡曲。五番目物。各流。作者未詳。唐土の高風は親孝行だったので、夢のお告げによって市で酒を売り次第に富貴になる。ある夜潯陽江(しんようのえ)から猩々が現われ、高風の素直な心を賞して酒の泉を与えて舞を舞う。現行曲は前半を省略して半能形式の祝言能にしたもの。
    2. [ 二 ] 歌舞伎所作事。長唄。二世桜田治助作詞。二世杵屋佐吉作曲。本名題「猩々雪酔覚(しょうじょうゆきのえいざめ)」。文政三年(一八二〇)江戸中村座初演。三世坂東三津五郎の七変化舞踊「月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)」の一つ。雪の浜辺での猩々の一人踊り。現在はほとんど廃絶。
    3. [ 三 ] 江戸時代に行なわれた河原崎座脇狂言の題名。明治七年(一八七四)、東京の芝新堀町に開場した河原崎座では「寿二人猩々(ことぶきににんしょうじょう)」と題して復活した。二人猩々。
    4. [ 四 ] 地唄。通称「女猩々」。伊勢屋三保作曲。謡曲「猩々」の文句を、遊女が銀襖の前で大杯をあおる趣向に書き替えたもの。京舞の手がついている。
    5. [ 五 ] 一中節。安政二年(一八五五)都一清作曲。謡曲「猩々」の文句をほとんどそのまま用いる。山田流の箏曲では、この作曲のまま演奏している。

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改訂新版 世界大百科事典 「猩猩」の意味・わかりやすい解説

猩猩 (しょうじょう)
xīng xīng

現在では一般に南方に生息するオランウータンを指すが,中国の古典等に現れる猩猩は想像的要素が強く,姿の形容もさまざまである。一般には猿に似ているとされ,長髪で人の顔,人の足をし,その声は小児の泣くようであり,群れを作ってはって歩くという。一説に,狗(いぬ)や豕(ぶた)に似ているともいう。《礼記(らいき)》曲礼上に〈猩猩能(よ)く言う〉とあるが,ただ人の言葉がわかるにすぎないともされる。猩猩は酒と屐(げた)が大好きであった。それで猩猩を捕らえるときには,その二物を置いて誘う。猩猩はわなとさとって一度は逃げるが,やがてもどり酒に酔い,足には屐をはいているので,結局,捕らえられたという(《唐国史補》巻下)。また六朝時代には,すでに猩猩の血は毛織物を真紅に染めることができ,しかも長く変色しないとされた。真紅の色を意味する猩血,猩紅等の言葉が生まれた理由である。ちなみに,猩猩の唇は昔,美味な肉の一つとされた。
オランウータン
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普及版 字通 「猩猩」の読み・字形・画数・意味

【猩猩】しようじよう(しやうじやう)

人に似た猿。唐・李白〔遠別離〕詩 日慘慘として、雲冥冥(めいめい)たり 猩猩は(な)き、鬼は雨に嘯(うそぶ)く 我縱(も)し之れを言ふも、將(は)た何ぞ補はん

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「猩猩」の解説

猩猩
(通称)
しょうじょう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
寿二人猩猩
初演
明治7.7(東京・河原崎座)

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世界大百科事典(旧版)内の猩猩の言及

【オランウータン】より

…ショウジョウ(猩々)とも呼ばれる。アフリカのゴリラ,チンパンジー,ピグミーチンパンジーに対して,オランウータンはアジアの唯一の大型類人猿である(イラスト)。霊長目ショウジョウ科。インドネシアのボルネオ島とスマトラ島のそれぞれに生息する2亜種が区別されているが,亜種間の違いはそれほど顕著なものではない。オランウータンというのは〈森の人〉を意味するマレー語で,彼らの生息地はこの2島の熱帯降雨林に限られている。…

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