翻訳|silicosis
塵肺(じんぱい)の一種で,職業病の一つ。遊離ケイ(珪)酸(石英など)を含む石やガラスなどを取り扱う採鉱場・石切場・陶磁器工場で長い間(5~20年)働いた人たちが,遊離ケイ酸をたくさん吸いこんだ結果,それが肺にたまって肺の繊維組織が増えて肺が硬くなり,その結果肺の働きが障害されて起こる。珪肺は職業病中で最も患者数が多く,また重症に進みやすい病気でもある。はじめの症状として息ぎれが起こるが,労働時の息ぎれが長く続くと肺性心を起こし,顔色が土色になり,むくみがでて,食欲もなくなってくることがある。また肺結核症を併発しやすい。この病気は進行すると,もとどおりになりにくいので自覚症状が現れる以前に発見することが必要である。そのため定期的胸部X線診断を受け,病型によっては進んだ場合には職業や職場を変えなければならない。治療として酸素吸入が必要となる。したがって予防が第一で,日本では,1960年じん肺法が制定されて,粉塵作業者の保護措置が講じられている。
→職業病
執筆者:三上 理一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
塵肺(じんぱい)症のうちでもっとも重要なもので、ケイ酸を含む粉塵を多年にわたって吸入することによりおこる。
[編集部]
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… 日本でも,鉱山開発が急速に進められた江戸時代になると,鉱山労働者に職業病が発生し,また近隣に鉱毒による公害をもたらした。佐渡奉行の川路聖謨(としあきら)は,その日記《島根のすさみ》に,石粉と油煙に冒された坑夫がほとんど30歳で死亡すると記し,秋田の大葛金山の文書では〈石粉まじりの痰を吐き〉とあり,生野銀山の文書でも〈痰を吐き,血を吐き,苦しみて死す〉などと記されているが,これらは後に〈ヨロケ〉といわれた塵肺の一つ珪肺を主症とする鉱山病であった。こうした坑夫の職業病に対する医療対策はほとんどとられていなかった。…
…けだえ(煙害による肺の病気)と並んで,江戸時代の職業による鉱山病の代表的なものである。坑内の採鉱労務者に多く,採鉱のさいの鉱塵によっておこる珪肺(けいはい)を主とした病気である。手労働による採鉱労働と,通風の悪さとが原因で,若い鉱夫も3年間採鉱労働をすると老人のようになるといわれた。…
※「珪肺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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