生活反応(読み)セイカツハンノウ(英語表記)vital reaction

デジタル大辞泉 「生活反応」の意味・読み・例文・類語

せいかつ‐はんのう〔セイクワツハンオウ〕【生活反応】

生きている場合にだけ起こる反応。皮下出血や、心音・脈拍・呼吸瞳孔どうこう反射など。瀕死ひんしの患者の生存を確かめたり、死体損傷が生存中のものかどうかを確かめたりするのに利用される。生体反応

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精選版 日本国語大辞典 「生活反応」の意味・読み・例文・類語

せいかつ‐はんのうセイクヮツハンオウ【生活反応】

  1. 〘 名詞 〙 法医学用語。外傷部にみられる皮下出血、炎症性の発赤・腫脹、化膿など、生きている時にだけおこるさまざまな反応。これは死体に外傷を加えても生じないため、死体検証に利用される。生体反応。

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改訂新版 世界大百科事典 「生活反応」の意味・わかりやすい解説

生活反応 (せいかつはんのう)
vital reaction

法医学の用語で,諸種の侵襲(外力・異物・毒物・異常温度など)が作用した痕跡が死体に認められるとき,それが生存中(生前)に作用したことを示す生体特有の反応をいう。したがって,生活反応はその侵襲が生前に作用したか,死後に作用したかの鑑別に応用され,法医学上重要な意義をもつ。ただし,死の直前の時期(死戦期)における反応は通常弱いので,生活反応の有無の判定が困難な場合もある。生活反応には,(1)侵襲の作用した局所あるいはその近くに限局してみられる反応(局所的生活反応)と,(2)侵襲の作用部位から隔たった部位に限局して,あるいは全身性にみられる反応(全身的生活反応)がある。全身的生活反応は血液循環あるいは呼吸運動によって発現するものである。

(1)表皮の剝脱(はくだつ)のうち,出血を伴っているものは生前に生じたことが明らかである。死後の損傷では出血を欠くが,漏出した体液が乾燥して黄色ないし褐色のかさぶた(痂皮)様のものを形成する場合がある。(2)生前に出血した血液は凝固して皮下組織の間に粘着していて拭去しがたいが,死後の新しい漏出性血液は容易に拭去できる。(3)生前の開放創は皮膚筋肉などの収縮により傷口は哆開(しかい)している(伸展して開いている)ことが多い。死後につくられた傷の傷口は一般に哆開しにくいが,死後間もない時点での傷口は多少哆開する。(4)生前の損傷においては発赤・腫張・化膿・白血球集合などの炎症性変化や肉芽の形成などがみられるが,死後の損傷にはみられない。炎症の経時的変化により受傷後の経過時間がおおよそ推定できる。(5)熱傷(やけど)における紅斑や水疱の形成は生活反応である。

(1)生前に損傷が起こると,体外・体内に多量に出血して全身に貧血が起こる。受傷時に心拍動がなければ全身的な貧血は起こらない。(2)傷口から侵入した細菌が血液循環によって全身に運ばれ全身感染症(敗血症,菌血症)を起こす。(3)損傷部の脂肪組織から遊離した脂肪滴や損傷部の静脈の断端から陰圧によって吸引された空気泡は血液循環によって肺や脳に運ばれて栓塞(脂肪栓塞,空気栓塞)を起こす。(4)口腔鼻腔の損傷や頭蓋底骨折などで出血した血液が肺の中に吸引されていたり,焼死体でその肺内にすすがみつかる。嘔吐あるいは逆流した胃内容物の吸引もある。これらの気道内吸引は呼吸運動のあったことを示す。(5)全身の血液中に一酸化炭素ヘモグロビンの存在を化学分析によって証明すれば,これは火災発生当時,呼吸運動と血液循環があった証拠である。(6)プランクトンが全身の各臓器へ広く分布していることは,人体が水没当時,呼吸および血液循環が存在していたことを示す証拠である。(7)新生児の場合,肺内への空気の吸入や胃腸管への空気の嚥下がみられれば,出生後に呼吸運動と嚥下運動が行われた証拠である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生活反応」の意味・わかりやすい解説

生活反応
せいかつはんのう

法医学用語。生きているときだけにおこる、さまざまな生体の反応をいい、全身的なものと局所的なものとに分けられる。全身的生活反応とは、創傷によって全身に現れる変化で、一般に貧血、脂肪塞栓(そくせん)、空気塞栓、実質細胞塞栓、血液吸入などがあり、このうちの一つでもあれば、その創傷は生存中に生じたものであるということができる。局所的生活反応とは、生存中に生じた創傷部に現れる反応性変化であって、次のようなものをいう。(1)表皮剥脱(はくだつ) 死斑(しはん)のないところに表皮剥脱(表皮がはぎ取られ、真皮の露出した傷)があって、そこに血液または組織液が凝固して痂皮(かひ)(かさぶた)を形成したり、毛細血管中の血液が凝固して網状を呈しているとき、あるいは、表皮剥脱部の皮下、または周囲の皮下組織に出血があるときには、生存中に生じたものであるということができる。(2)皮下出血 死斑のないところに皮下出血があれば、その創傷は生存中に生じたものである。しかも生存中に生じたものでは組織内に出た血液は固く凝固し、死後に生じたものでは液状をなすか、または軽く凝固している。なお、死斑の強いときには、皮下出血は死斑と誤認しやすいが、皮膚を切ってみると、皮下出血では皮下組織内に固い凝血を認め、死斑では凝血を認めない。(3)炎症性の発赤、腫脹(しゅちょう)、化膿(かのう)、肉芽組織 これらの所見があれば、その創傷は明らかに生前に生じたものである。また、生存中に生じた創傷は、皮膚・筋肉などの収縮によって哆開(しかい)する(傷口が開く)が、死後に生じたものは哆開しても、生前の創傷に比べて軽度である。ことに死体硬直の緩解したあとに生じた創傷は哆開することがない。

[船尾忠孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生活反応」の意味・わかりやすい解説

生活反応
せいかつはんのう
vital reaction

死体に暴力などの痕跡があるとき,それが生存中に加えられたことを示す変化をいう。法医学では最も重要な反応である。創傷の局所の生活反応としては,出血,創口が大きく開いている状態,炎症症状,セロトニンやヒスタミンの増加などがあり,局所以外の生活反応には,空気栓塞,脂肪栓塞,全身性貧血,血液の吸引・嚥下などがある。焼死体にみられるすすの吸入,一酸化炭素ヘモグロビンの形成,水疱性火傷など,あるいは溺死体にみられる水の吸引や嚥下も生活反応である。

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百科事典マイペディア 「生活反応」の意味・わかりやすい解説

生活反応【せいかつはんのう】

法医学用語。生体反応とも。傷害その他の作用に対して,生体のみに起こる反応。死体にこの反応による変化が存在しているか否かによって,これらの作用が加えられたのが生存中か死後かが判定される。たとえば,外傷における多量の失血や損傷部組織中の出血,焼死における気管中の煤(すす)の存在や血液中の一酸化炭素量の増加,薬物摂取における消化器以外の臓器への薬物の分布など。

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