狭義には経済社会を構成する個々の部面(産業,企業,工場など)での生産能力あるいは労働の生産性のことをいうが,一般的には人間の社会生活に必要な種々の生産物の社会的供給能力,いわゆる社会的生産力の意味で用いられる。人類社会の発展はこのような社会的生産力の発展によって支えられており,生産力の発展水準が社会発展の度合を規定しているといってよい。広い意味での社会的生産力の水準を規定するのは,労働力の質および量,機械化の進展に代表される生産技術の発達の程度,労働力と生産手段の社会的質量編成,利用可能な資源の性能とその賦存状況,さらに生産物市場,労働市場,金融市場を含むいわゆる市場機構の発達水準,およびこれらすべてにかかわる科学的知識の質と量などである。
生産力の上昇には質的な面と量的な面がある。社会的供給能力の増大は新技術の導入など生産性の上昇によるだけでなく,技術水準不変のままでの生産の量的拡大によっても生じており,現実には両者が分かちがたく絡みあっている。ともあれ全体としての社会的生産力は短期的には変動,停滞しながら,歴史的には一貫して上昇してきた。資本主義成立後の産業構造高度化の過程,軽工業から重化学工業の時代へ,さらに経済のソフト化,ハイ・テクノロジー時代の到来は,社会的生産力の上昇が驚くべき速さで進んでいることを示している。しかし生産力の上昇は人類に物質的豊かさをもたらした反面,公害,資源・エネルギー危機など深刻な問題をも惹起した。
マルクス主義およびマルクス経済学では,生産力を社会的生産力ととらえ,特有の重要な規定が与えられる。すなわち不断に上昇する生産力が,やがてはそれまでそれを包摂しその発展を促進してきた旧来の生産関係(生産手段の所有関係)を破壊し,新しい生産関係を形成せしめる。社会革命の起爆力になるというのである。
執筆者:木村 一朗
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…マルクス主義およびマルクス経済学に特有の基本概念である。広義の生産関係は社会的生産力を構成する個々の契機の社会的相互関係であり,生産物市場,労働市場,金融市場などにおける現実的諸関係を含むが,それらはすべて生産における人間相互の関係によって根本的に規定されているから,生産関係の基軸は生産手段に対する人間の関係,すなわち生産手段の所有関係であるとされる。さらに,歴史的に実在する生産関係は原始共同体,奴隷制,封建制,資本主義,社会主義の五つであり,資本主義社会は生産手段の所有者(資本家,土地所有者)階級が生産手段をもたない直接生産者(賃金労働者)階級を支配し,社会的生産の直接的担い手である労働者が資本家階級のために剰余価値を生産する,いわゆる階級社会,それも最後の階級社会であると説かれる。…
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