水田の作業に着用される履き物。稲刈りなどの際、湿田にはまらぬために履く田下駄と、苗代や田植前の本田(ほんでん)の代踏(しろふ)みに使われる大足(おおあし)の2種に大別される。前者はナンバ、カンジキ、ヤチゲタなどの名でよばれ、長方形の大きい板を縦長または横長に使う型のほか、木の枝を曲げた丸い枠や板を組んだ枠に下駄を取り付けた型、竹や木を簾(すだれ)状に編んだ型などがある。後者は広くオオアシの名でよばれ、細長い大きな下駄を木の枠に取り付け、取り縄を持って操作し、田面をまんべんなく歩いて泥を細かく練り、緑肥や稲株を泥中に踏み込み、代の表面を調整するのに用いられる。2種の田下駄の別はすでに弥生(やよい)時代にみられ、その起源の古いことが察せられる。大足は年の初めに豊穣(ほうじょう)を祈る予祝行事のなかでも用いられ、1192年(建久3)編の『皇大神宮年中行事』に記され、中世に起源をもつとみられる各地の田遊びでその所作がなされている。水田の代踏みには、大足を用いるほか、人の素足による「素踏み」、馬による「踏ませ」があり、東南アジアに広がる踏耕(とうこう)との関連が注目される。
[木下 忠]
『潮田鉄雄『田下駄の変遷』(『民具論集I』所収・1969・慶友社)』▽『木下忠著『日本農耕技術の起源と伝統』(1985・雄山閣出版)』
深田や湿地,葦原などに入り,作業をするときに用いる大型の下駄。代踏みには大きな枠型や箱型の大足(おおあし)と呼ぶ田下駄を用い,深田の稲刈りや湿地の草刈りには板型の〈なんば〉,輪かんじき型のかんじきのほか,下駄型,台型の田下駄が用いられた。弥生時代の立屋敷遺跡(福岡県遠賀郡水巻町)からは歯のない下駄型が,同後期の登呂遺跡(静岡市)や山木遺跡(静岡県伊豆の国市の旧韮山町)からは大足の足板や板型の〈なんば〉,下駄型の田下駄が出土している。下駄は東南アジアの稲作農耕民に履かれており,稲作とともに日本に伝わり,各種形態へ発展したと思われる。田下駄は作業能率を高めたり,足の保護に用いられ,あらゆる時代を通じて使われてきたが,第2次大戦後の農業の機械化により衰退,今日ではほとんど用いられていない。
執筆者:潮田 鉄雄
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…歯のある台木に鼻緒や端棒(はなぼう)をつけたはきもの(イラスト)。弥生時代後期の登呂遺跡から下駄状の木製品が出土しているが,芦刈りや稲の穂摘みにはいた田下駄であろう。古墳時代になると大陸から下駄が伝えられ,地方豪族の墓などから前穴の内側へ寄った二枚歯の下駄が出土しており,当時は権威の象徴として用いられた。…
※「田下駄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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