日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中塊堂」の意味・わかりやすい解説
田中塊堂
たなかかいどう
(1896―1976)
書家。岡山県矢掛(やかげ)町出身。本名は英市(えいいち)。28歳で川谷尚亭(かわたにしょうてい)に師事し本格的に書を始めたが、仮名は独学で極め、大字仮名の作品を多数発表、それまで細字に限られていた仮名の表現領域を広めることにより、現代仮名書壇の隆盛の基礎を築いた。帝塚山(てづかやま)学院教授を務めるかたわら、自ら千草会を主宰し、相沢春洋(しゅんよう)、田中親美(しんび)とともに古筆(こひつ)の研究にも力を注ぎ、『かな研究』を発行した。一方、わが国の古写経の体系的な調査研究の草分けとしても評価が高い。東大寺、四天王寺をはじめ全国の寺社を踏査し、古写経の研究収集に努めた成果として『古写経綜鑒(そうかん)』『日本写経現存目録』を著した。1968年(昭和43)芸術院賞受賞。
[神崎充晴]