デジタル大辞泉
「田中小実昌」の意味・読み・例文・類語
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田中小実昌
たなかこみまさ
(1925―2000)
小説家、翻訳家。東京生まれ。東京大学哲学科中退。第二次世界大戦中、中国大陸を兵士として転戦、敗戦後復員して、東京大学に入学。新宿のストリップ劇場で働き、そこに集まる群衆と踊り子の生態をユーモラスに描いた随筆で認められた。1979年(昭和54)7月『浪曲師朝日丸の話』『ミミのこと』で第81回直木賞、同年9月『ポロポロ』で第15回谷崎潤一郎賞を受ける。小説にはほかに『自動巻時計の一日』(1971)、『幻の女』(1973)、『乙女島のおとめ』(1974)、『香具師(やし)の旅』(1979)、『海辺でからっぽ』(1986)などがあり、一見とぼけた軽い文体でつづられた私小説風だが、その〈私〉を突き抜けたところに展開する〈私〉の孤独に、この人ならではの魅力がある。
[古林 尚]
『『自動巻時計の一日』(1971・河出書房新社)』▽『『ポロポロ』(中公文庫)』
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田中小実昌
たなかこみまさ
[生]1925.4.29. 東京,東京
[没]2000.2.27. アメリカ合衆国,カリフォルニア,ロサンゼルス
作家,翻訳家。牧師の父のもと,広島県呉市で育った。第2次世界大戦中の 1944年,兵士として中国大陸を転戦中,湖南省の戦闘で落伍した。これ以後,頑張らないという人生哲学を確立した。復員後,東京大学哲学科に入ったが中退。さまざまな職業を経て 1955年頃から翻訳を始め,レイモンド・チャンドラーの推理小説『湖中の女』(1959)などで高い評価を得た。1971年に『自動巻時計の一日』が直木賞候補になる。1979年,『香具師の旅』所収の短編『浪曲師朝日丸の話』『ミミのこと』で直木賞,『ポロポロ』で谷崎潤一郎賞を受賞。ほかに『カント節』(1985),『ないものの存在』(1990)など。
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田中小実昌【たなかこみまさ】
小説家,翻訳家。東京生れ。高校在学中に応召,中国で敗戦を迎える。復員後東大哲学科に復学するが中退。将校クラブのバーテン,コメディアン,香具師(やし)などを経て,チャンドラーなどの推理小説の翻訳を始める。1957年頃から下積みの芸人などを素材に小説やエッセーを発表しはじめ,独特の柔らかさとペーソスを感じさせる筆致が高く評価される。1979年《浪曲師朝日丸の話》《ミミのこと》で直木賞,《ポロポロ》で谷崎潤一郎賞受賞。
→関連項目神代辰巳
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田中小実昌 たなか-こみまさ
1925-2000 昭和後期-平成時代の小説家,翻訳家。
大正14年4月29日生まれ。牧師の父をもつ。戦後東大を中退し,進駐軍,ストリップ劇場などではたらく。はじめチャンドラーらの推理小説の翻訳で知られる。昭和54年「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」で直木賞,「ポロポロ」で谷崎潤一郎賞。平成12年2月27日死去。74歳。東京出身。
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