家庭医学館 「異常ヘモグロビン症」の解説
いじょうへもぐろびんしょう【異常ヘモグロビン症 Hemoglobinopathy】
遺伝的な問題があって、ヘモグロビン(血色素(けっしきそ))が異常な形になり、そのためにおこるさまざまな血液の病気をまとめて、異常ヘモグロビン症といいます。
おもな病気としては鎌状赤血球貧血(かまじょうせっけっきゅうひんけつ)、サラセミア、不安定(ふあんてい)ヘモグロビン症(しょう)などがあります。
この病気は、両親のどちらかに異常があれば、それが子どもに遺伝します(常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん))が、突然変異によって発症することもあります。
[症状]
ヘモグロビンが異常でも、大部分はそのはたらきに問題はなく、したがって症状はありません。
しかし、赤血球(せっけっきゅう)が変形して溶血性貧血(「溶血性貧血」)をおこしたり、酸素との結合能力が正常より高くなったり低くなったりする場合、さらにヘモグロビンの合成がうまくできなくなることもあり、この場合に治療対象となります。
異常ヘモグロビンは、電気的な性質が正常なものとちがうので、その性質を利用して血液から検出します。
最終的には、赤血球の形の異常や性質の不安定性を調べ、いろいろな検査結果と合わせて診断します。
[治療]
つぎの3つの病気について解説します。
■鎌状赤血球貧血
日本人にはほとんどみられない病気です。この病気では、溶血と血行障害による全身の衰弱がみられるので、環境や栄養をよくし、感染の予防と治療につとめます。輸血、葉酸(ようさん)の使用も行なわれます。
■サラセミア
赤血球が小さく、ヘモグロビンも少なく、溶血をおこすので、輸血、脾臓(ひぞう)の切除、葉酸の使用などが行なわれます。
■不安定ヘモグロビン症
赤血球が変形しますが、軽症から重症まであります。重症の場合は、ほぼサラセミアと同じような治療をします。