(読み)イボ(その他表記)wart

翻訳|wart

デジタル大辞泉 「疣」の意味・読み・例文・類語

いぼ【×疣】

表皮一部が増殖して盛り上がり、角質が肥厚して表面が粗くなったもの。疣贅ゆうぜい
物の表面に小さく突起しているもの。

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精選版 日本国語大辞典 「疣」の意味・読み・例文・類語

いぼ【疣・肬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 皮膚にできる小さな突起物。角質層の肥厚から生ずるもの。〔正倉院文書‐神亀三年(726)山背国愛宕郡雲下里計帳〕
    1. [初出の実例]「惣躰、背中に有る疣(イボ)は背疣といふて」(出典:浄瑠璃新版歌祭文(お染久松)(1780)座摩社)
  3. イカやタコの吸盤。
    1. [初出の実例]「はりだこといふは、両に皮をひっぱって、まはりにいぼが有程に」(出典:虎明本狂言・張蛸(室町末‐近世初))
  4. 物の表面に小さく突起している物。
    1. [初出の実例]「武蔵がばうと申は〈略〉八尺五寸の其内に、八十三のいほをすへ、くぎのかしらをみがきたて」(出典:幸若・ほり川(室町末‐近世初))

たり【疣】

  1. 〘 名詞 〙 いぼ。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「疣」の意味・わかりやすい解説

疣 (いぼ)
wart

一般に小型の良性皮膚腫瘍で,半球状に盛り上がり,表面が硬くざらざらとしているものをさし,ウイルスの感染によって起こるものや,皮膚の老人性変化によるものなどが含まれる。医学的には疣贅(ゆうぜい)verrucaと呼ばれる。

ウイルスによっておこるいぼは,パポーバウイルス科に属するヒト乳頭腫ウイルスの感染によるものであるが,臨床的には以下の4種類に分類される。(1)尋常性疣贅verruca vulgaris 主として小児手足にみられ,表面の角化がつよく硬い。足底にみられる場合には,つねに踏みつけられているために皮膚面から隆起せず,魚の目のような外観を呈する。小児ではつめのまわりにいぼが多発することがあるが,これは,いわゆるささくれからウイルスが侵入するためと考えられる。(2)指状疣贅verruca digitata 顔,頸などにみられ,指状ないしは花のつぼみ状に皮膚面から突出するいぼで,成人男子の下顎部にみられるものは,かみそりの刃により感染して増える。糸状疣贅verruca filiformisともいう。(3)青年性扁平疣贅verruca planae juveniles 青年女子の顔面,手背などにみられることが多く,小型で皮膚面からわずかに扁平に隆起する。多発することが多い。つよいかゆみや,発赤などの炎症症状をともなって急速に全身のいぼがいっせいに消失することがある。(4)尖圭(せんけい)コンジローマcondyloma acuminatum 外陰部にみられるいぼで,やわらかで赤みがつよく,ニワトリとさかのような形をしている。主として性交によって感染し,小児,老人にはほとんどみられない。

 このように種々の病型のいぼがみられる理由としては,ウイルスの感染した皮膚の状態の差にもよるが,ヒト乳頭腫ウイルスにはいくつかの種類があることが知られており,ウイルスの差によっても病型が異なる。あらゆる哺乳類,鳥類はそれぞれ独自のいぼウイルスをもっているが,これらのウイルスは,種の異なる動物にうつることはない。したがって,他の動物のいぼがヒトにうつることはない。いぼは,さわっただけではうつるものではなく,すりむき傷やひっかき傷などの浅い傷からウイルスが侵入すると感染する。感染してから目に見えるようになるまでの潜伏期間は3ヵ月から半年以上と長いため,ふつう,いぼはいつ,だれからうつったのか明らかでないことが多い。また一つ一つのいぼには寿命があるといわれており,自然に消えていくこともあるが,次々と増える場合には治療が必要となる。電気メスで焼いたり,液体窒素による凍結療法が行われる。いぼの治療法にはイチジクの汁やナスのへたの黒焼きなどによる多くの民間療法があり,各地にいぼ取り地蔵がある。また,暗示によっていぼがとれることもある。

 なお,俗に〈みずいぼ〉と呼ばれるものは,伝染性軟属腫molluscum contagiosumといい,ポックスウイルス科に属するウイルスの感染によりおこる。アズキ大以下の,皮膚面から半球状に盛り上がる表面がなめらかで光沢のある腫瘍で,中央部に陥凹がみられるのが特徴である。

老人性のいぼは,脂漏性角化腫seborrheic keratosisと呼ばれるもので,中年期以後の顔面,軀幹にみられ,伝染性のものではなく,皮膚の老化現象によるものとされている。黒褐色調を呈するものが多く,いわゆる老人性のしみの盛り上がったものである。目だつ所にあるものや,盛り上がりのつよいものは外科的に切除することもあるが,放置してもさしつかえない。液体窒素による凍結療法も有効である。これらすべてのいぼは,皮膚癌になることはないが,皮膚癌の初期をいぼと間違えることがあるので,急速に大きくなったり,表面がくずれて出血するようなものは注意する必要がある。
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普及版 字通 「疣」の読み・字形・画数・意味


9画

(異体字)肬
8画

[字音] ユウ(イウ)
[字訓] いぼ

[字形] 形声
声符は尤(ゆう)。〔玉〕に「疣腫(いうしよう)は結なり」とあり、いぼをいう。〔荘子、大宗師〕に「彼は生を以て附贅(ふぜい)縣疣(けんいう)と爲す」とあり、よけいのものをいう。尤に大なるものの意があり、邪魔ものの意がある。

[訓義]
1. いぼ、はれもの、かさ。
2. こぶ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕疣 伊比保(いひぼ)、、太利(たり)、、比志比子(ひしひね)〔名義抄〕疣 フスベキズ・カサ・ヤマヒ・ムスホボル・イヒボ/懸疣 サガリフサベ/創疣 キズフスベ 〔立〕疣 クタム・フスボル・カサヤマヒ・カサカク・フスベ・イヲススフ・キズ

[熟語]
疣子・疣贅・疣瘡・疣目・疣
[下接語]
懸疣・贅疣・瘡疣・瘢疣

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百科事典マイペディア 「疣」の意味・わかりやすい解説

疣【いぼ】

疣贅(ゆうぜい)ともいう。皮膚面の小隆起で,ふつう米粒〜豆粒大。ウイルスの感染によるものに,尋常性疣贅,青年性扁平疣贅,伝染性軟属腫,尖圭(せんけい)コンジローマがあり,良性腫瘍として起こるものに老人性疣贅がある。尋常性疣贅と青年性扁平疣贅は,乾燥性でややかたい。尖圭(せんけい)コンジローマは男女の外陰部に生じる淡紅色の小腫瘍の集合。いずれも治療を必要とする。老人性疣贅は皮膚の老人性変化の一種で,顔,首,胸,背中などに多発する褐色扁平の柔らかい疣である。なお皮膚癌の初期は疣に似るから注意を要する。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【民間療法】より

…医師の資格をもたない一般人が,もっぱら伝統的な知識にもとづいて行う治療。風邪のときの卵酒,いぼとりなど,一般に家庭内で行われるものが多く,これらは素人療法,家庭医療などともいわれるが,広義には磁気や電子機器を用いた療法,断食療法など特殊な食事療法,またこれらを組み合わせたものなどをも含めたものをいう。また,日本では明治以後,西洋医学が主流となり,漢方医学は医療類似行為として,医療行政や医学教育から排除され,その結果,民間で細々と実施されるにすぎなくなったことから,鍼灸(しんきゆう)やあんま(按摩)など漢方医学的治療も民間療法とされてきた。…

※「疣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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