疫痢(読み)エキリ(英語表記)ekiri

デジタル大辞泉 「疫痢」の意味・読み・例文・類語

えき‐り【疫痢】

赤痢うち小児にみられる重症型のもの。顔面蒼白・血圧低下・ひきつけ・意識混濁などの症状を呈する。経過が急で死亡率が高いことから「はやて」ともよばれた。近年発病はまれ。小児赤痢。 夏》

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精選版 日本国語大辞典 「疫痢」の意味・読み・例文・類語

えき‐り【疫痢】

〘名〙
下痢の症状が激しい流行性の伝染病
※全九集(1566頃)三「疫痢の説 一郡一庄一国など老少ともにはやり痢を病む。これ疫痢也」
② 小児、とくに二~六歳の幼児の赤痢で、中毒症状を伴った重症型をいう。血液循環障害による顔面蒼白、手足の冷え、脈搏の停止や、ひきつけ、意識混濁などの神経系障害を起こす。伝染病予防法により法定伝染病に指定されていたが、平成一一年(一九九九)の感染症法の施行に伴い四類感染症に分類されている。小児劇症赤痢。
日本医学史(1904)〈富士川游〉「近時世人が之を疫痢と称するは古人が用ひし名にあらず」

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改訂新版 世界大百科事典 「疫痢」の意味・わかりやすい解説

疫痢 (えきり)
ekiri

赤痢菌感染に基づく小児の特殊な症候群。1914年伊東祐彦により独立疾患とされ,22年法定伝染病として取り扱われるようになった。小児がどうして疫痢症状を示すのかという本態については,ヒスタミン中毒説,体質説,副腎皮質機能不全説,低カルシウム血症などの諸説が出された。しかし,これについては,未解決のまま推移しているうちに疫痢そのものが64年以降ほとんどみられなくなった。

 疫痢は2~5歳,とくに3歳前後の幼児を襲う。幼児は突如無気力となり,39~40℃の高熱を発し,顔面蒼白,脈拍微弱,頻脈,四肢冷感などの循環障害があらわれ,意識が混濁し,痙攣けいれん)が起こる。嘔吐を伴い,反復するときはコーヒー残渣様の吐物がみられる。腹部は陥没して綿をつかむように軟らかくなる。数回の緑色粘液下痢便があり,ときに粘血便をみる。菌検査により赤痢菌が分離される場合が多い。末梢循環障害,脳症状を伴う中毒症状,胃腸症状を主とする症候群で急激な経過をとる。発病10時間で死亡する例もあり,致命率は30%にも及んだ。
赤痢
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百科事典マイペディア 「疫痢」の意味・わかりやすい解説

疫痢【えきり】

幼児の赤痢で,下痢,嘔吐(おうと)とともに顔面蒼白(そうはく),手足が冷たいなどの循環障害や,意識が混濁したり,ひきつけたりするなどの神経系の障害のような中毒症状の強く現れたものをいう。特に3〜4歳に多い。昔は肺炎と並んで幼児死亡の二大原因であったが,現在はほとんどなくなり,しかも抗生物質,輸液などで救命できるようになった。
→関連項目法定伝染病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「疫痢」の意味・わかりやすい解説

疫痢
えきり

日本で多発した小児の伝染性下痢症で,赤痢菌感染が主因。2~5歳の幼児に突然発症することが多く,赤痢固有の症状である嘔吐,高熱,下痢,腹痛などのほかに昏睡,けいれん,自家中毒症状などを呈する。最近は赤痢が激減したため,疫痢もみられなくなった。

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普及版 字通 「疫痢」の読み・字形・画数・意味

【疫痢】えきり

下痢をともなう流行病。

字通「疫」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「疫痢」の意味・わかりやすい解説

疫痢
えきり

赤痢

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栄養・生化学辞典 「疫痢」の解説

疫痢

 日本人幼児にみられた特有の赤痢菌感染症で,ショック症状を呈する.

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