出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
病気の原因,すなわち病気を成立させる障害因子のこと(なお病気の原因の作用するしくみをはじめ,病気の原因を広範な見地から考究する学問を病因論という)。病気は決して一つの単純な原因によるものではなく,原則として多数の原因の組合せに基づくものである。そして,多数の原因のうち,第一義的で最も重要なものを主因と呼び,それ以外の副次的なものを副因ないし誘因といっている。しかし,これらの区別は実際には容易でない。また病因は外因と内因に分けられる。外界から生体に作用する因子が外因で,生体自身の内部にひそみ,病気にかかりやすさをつくる要素が内因である。したがって,病気の成立には内因と外因の相関があり,(病気)=(内因)×(外因)というような関係が考えられる。たとえば,ニューモシスチス・カリニPneumocystis cariniiという原虫やアスペルギルスのような真菌は,免疫機能が正常である人には感染を起こさないが,多量の制癌薬投与を受け,骨髄が薬剤によって障害されて免疫細胞が減少している白血病患者や免疫抑制療法を施された臓器移植患者,あるいは先天性または獲得性免疫不全症候群のような免疫機能の低下している患者では,容易にこれらの病原体が感染し,身体の中で増殖を起こして重篤な病気をひき起こすことがある。この場合,原虫や真菌は外因であり,免疫機能低下状態が内因である。内因が大であれば,外因が小であっても病気は成り立つし,逆に強大な外因であれば,内因が微小であっても病気は成り立つ。また,ある因子がつぎつぎと内因の変化をひき起こして,病気を形づくっていく。たとえば,糖尿病になって高血糖状態が続いていると,動脈硬化や高血圧が急速に進行し,心筋梗塞(こうそく),眼底出血,脳出血の危険性が高くなってくる。
生体は,病気に対するいくつかの防御機構(たとえば免疫)を備えている。これも,生活環境中の外因とのかかわりあいを通じて形成されるものである。この防御機構を弱めるもの,すなわち老化現象とか栄養状態の低下(栄養素摂取不足という外因の結果)なども内因である。このような生活活動中に加わった外因によって,体内に生じた病気の素因は,〈後天的な内因〉というが,多くのものが〈先天的な内因〉と考えられる。体質などが遺伝子によって決定されているように,特定の病気にかかりやすいという素質も遺伝子の働きによって決まると考えられる。これがはっきりしているのが遺伝性疾患であり,病気のほぼ5%あるとされる。しかしDNAの塩基配列の異常まで判明しているのは,ごくわずかしかない。ヒトの遺伝子構造や,その染色体上の位置も,少しずつ解明されているので,遺伝性疾患の本態,さらに素質に関する分子生物学的機構も将来は明らかにされると考えられる。
生体が処理できないような環境条件の変化が外因となりうる。物理学的要因(機械力,電流,電磁波,気圧,温度),化学的要因(水,栄養素の過不足,毒物,金属)もあるが,外因のなかで最も重要なのは生物学的要因である。寄生虫から細菌,ウイルス,ウイロイドに至るまで,さまざまな病原生物が生体の感染症をひき起こす外因として働く。
執筆者:山口 和克
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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