発光(生物)(読み)はっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「発光(生物)」の意味・わかりやすい解説

発光(生物)
はっこう

生物による発光現象を、生物発光または単に発光という。生物発光は酸化による化学発光であるが、発生する光はすべて可視光で、熱の発生をほとんど伴わず、いわゆる冷光を発する。生物発光の効率はきわめてよく、ホタルの場合、約90%といわれている。ホタルやヤコウチュウのように発光が細胞内で行われるものを細胞内発光、ウミホタルツバサゴカイのように分泌物が光るものを細胞外発光という。また、発光生物自身の生産する物質が発光するものを一次発光といい、共生または寄生している発光細菌などによる自力発光でないものを二次発光という。動物以外で発光するものはバクテリア(発光細菌)とキノコ発光菌類)、および鞭毛(べんもう)藻類(動物学では原生動物としても分類される)に限られている。一方、動物では原生動物から脊椎(せきつい)動物(魚類)まで、おもなグループに広く発光するものが認められる。

村上 彰]

発光の機構

発光の機構には、発光物質が酵素の作用により酸化されて発光する型のものが多い。発光物質をルシフェリン(発光素)、酵素をルシフェラーゼ発光酵素)と総称する。一般的に、生物種が異なればルシフェリンも異なり、ルシフェラーゼも近縁種間でのみ作用する。ホタルの発光はルシフェリン、ルシフェラーゼと酸素のほかに、アデノシン三リン酸(ATP)とマグネシウムイオンを必要とするが、ウミホタルでは、酸素の存在下でルシフェリンとルシフェラーゼおよび水があれば発光する。また、オワンクラゲエクオリンイクオリン)aequorinは、カルシウムイオンのような低分子物質の触媒によって発光する。エクオリンとともに発見・分離された緑色蛍光タンパク質Green Fluorescent Protein(GFP)は励起光により発光する。これを組換えDNAの技術によって細胞に取り込ませ、特定の遺伝子の発現を判定する(レポーター遺伝子)。また、種々の発光物質は、ATP、カルシウム、酵素等それぞれ異なる物質に低濃度で反応して発光するため、それらの検出にも広く利用されている。

[村上 彰]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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