白馬の騎者（読み）はくばのきしゃ（英語表記）Der Schimmelreiter

日本大百科全書(ニッポニカ)

白馬の騎者
はくばのきしゃ
Der Schimmelreiter

ドイツの作家シュトルムの最後の小説。1888年刊。無理解な民衆の抵抗にも屈せず、鋭い観察と信念に基づき、いかなる波浪にも耐えうる新しい堤防を構築する北海の若き堤防監督官ハウケ・ハイエンの物語。新堤防の完成後、彼は旧堤防の改築をめぐり、信念に背いて反対派と妥協、たちまち恐ろしい自然の報復を受け、妻子もろとも高潮の犠牲となる。以後、その魂は郷土を守り続け、嵐(あらし)の夜には白馬に乗った彼が現れるとの伝説が生まれた。しかもこの作品は、そうした嵐の夜、土地の古老がその伝説を語り聞かせる枠形式の物語になっている。北海の神秘的世界を背景に、時代に先駆けて合理的精神を体現しようとした人間の悲劇的運命を描く、ドイツ写実主義郷土文学の傑作。

［平田達治］

『関泰祐訳『白馬の騎者』（角川文庫）』

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)