白鳥処女(読み)はくちょうしょじょ

改訂新版 世界大百科事典 「白鳥処女」の意味・わかりやすい解説

白鳥処女 (はくちょうしょじょ)

ほとんど全世界に分布する昔話モティーフで,日本では〈天人女房〉がこれにあたる。若者が水浴中の娘が脱いでおいた白鳥の衣(日本では羽衣)を奪い,妻になることを強要する。数年後妻は衣を見つけて故郷へ去るが,そのとき,自分の帰る先を言い置く。夫は妻を求めて困難な旅に出,彼女を発見する。このモティーフは,古代インドの《シャタパタ・ブラーフマナ》や《リグ・ベーダ》にみられるところから,インド起源と考えられている。西欧へはヘレニズムの時代に伝播し,主として北欧・中欧で他の諸モティーフと結合して,多様な展開をしたものと考えられる。ヨーロッパでは,白鳥の姿をした娘が,衣を脱ぐと人間になるのに対し,中国や日本をはじめ東アジアでは,天人が飛来して羽衣を脱ぐとされている。またヨーロッパでは妻の行き先が遠い魔の山であるに対し,東アジアでは天とされる。
天人女房
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百科事典マイペディア 「白鳥処女」の意味・わかりやすい解説

白鳥処女【はくちょうしょじょ】

天界少女が白鳥(あるいは鶴,鳩)になって地上降り,水浴中に人間の男に衣を隠されて男の妻となるが,衣を取り戻して去るといったプロットをもつ伝承。世界中に分布する昔話・民話のモティーフで,インド,北欧,中国などにも見られ,日本では羽衣伝説(天人女房)として伝わる。
→関連項目伝説羽衣伝説

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