皇帝崇拝(読み)こうていすうはい(英語表記)emperor worship; Kaiserkult

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「皇帝崇拝」の意味・わかりやすい解説

皇帝崇拝
こうていすうはい
emperor worship; Kaiserkult

政治的主権者が神格として崇められる現象。厳密には,アウグスツス以後のローマ皇帝を神として崇拝する観念儀礼,組織。古代オリエントにおける王の神格化,小アジアのギリシア植民地におけるアレクサンドロス3世 (大王)崇拝,そしてヘレニズム諸王朝における君主礼拝を先駆形態とする。ローマではギリシアのような神人崇拝の慣習はなかったが,ギリシアの影響を受けて前4世紀頃からロムルスの神格化が行われていた。カエサルみずからユピテルと呼ばせ,生存中に神格化された。アウグスツスは,神のごときユリウスと称し,東方では生存中から,西方でも死後神として崇拝された。以後のローマ諸皇帝には神格化を望まない者もおり,全皇帝が神として崇拝を受けたわけではない。神格化された皇帝としては,アウグスツスのほかに,トラヤヌスハドリアヌス,ピウス,カラカラなどがいる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「皇帝崇拝」の解説

皇帝崇拝
こうていすうはい
imperial cult

古代ローマで皇帝を神格化して崇拝する観念
オリエントの影響により,ローマの東方属州ではやくから広まったが,帝政樹立とともに,帝国維持・帝権強化のために,皇帝を現人神 (あらひとがみ) として崇拝することが強要された。キリスト教信者はこれを否定したので,迫害を受けることが多かった。

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百科事典マイペディア 「皇帝崇拝」の意味・わかりやすい解説

皇帝崇拝【こうていすうはい】

ローマ帝政期の,ローマ皇帝を神格化して崇拝する観念。元来はヘレニズム世界にみられた君主崇拝に由来する。キリスト教信仰と衝突し,教徒迫害の原因となった。

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