故事成語を知る辞典 「目には目を、歯には歯を」の解説
目には目を、歯には歯を
[使用例] いいですか、奥様、私はさとったんです。目には目を、歯には歯を、そうして、寛大さには寛大さを、って[三島由紀夫*白蟻の巣|1956]
[使用例] 「俺は、刑罰もそれでいいと思う」「目には目を?」「加害者は自分のしたことと同じことを、やられるべきなんだ」[伊坂幸太郎*重力ピエロ|2003]
[由来] 紀元前一八世紀のバビロニアの王、ハムラビが制定した「ハムラビ法典」から。いくつかの条文で、「同等の身分の者に目をつぶされた場合には、目をつぶし、歯を折られた場合には、歯を折る」という罰則が規定されています。また、「旧約聖書―出エジプト記・二一」には「命には命、目には目、歯には歯、手には手、足には足、焼き傷には焼き傷、傷には傷、打ち傷には打ち傷」とあり、「旧約聖書―レビ記・二四」にも、「骨折には骨折、目には目、歯には歯をもって」とあり、ユダヤ教の法律でも同様の考え方がされていたことがわかります。
[解説] ❶「同害復讐の原理」と呼ばれる法思想を表すことば。受けた害を越える報復をするのが一般的だった時代には、この考え方は、報復を一定の範囲に抑える歯止めとして機能したものと考えられています。なお、「新約聖書―マタイ伝・五」では、イエスがこの考え方を否定して、「だれかがあなたの右の頰を打つなら、ほかの頰をも向けてやりなさい」と述べています。❷現在では、「同害復讐」は行きすぎた報復だと考えるのが、常識的な法思想。そのため、このことばも、むしろ敵対者に対する憎悪をかきたて、力による報復を訴えるものとして用いられています。
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