室町時代の中ごろより、売買の仲立ちをする商人である「牙儈(すあい)」が出現するようになり、仲介者が取り決めた価格によって売買が行なわれることが多くなった。この価格はもともと「すあい」の集合する場、すなわち「すあい場」で成り立っていたところから次第に協定価格そのものを意味するようになり、転化して「あい場」というようになる。それに「相場」の文字をあてたところから「そうば」の語が生じたものと考えられる。江戸時代には、平均的な取引値段や物価をも意味するようになる。
一般に、ある商品の市場におけるある時点での売り(供給)と買い(需要)の出会いによって成立した取引価格をいう。したがって、相場は時々刻々に変動するのが本来の姿である。しかし商品によっては、一定の期間、意図的に相場を固定し、あらかじめ定めた取引価格で取引を進めることがある。これを固定相場(制)という。これに対して、相場本来の変動性をとくに強調するときは、変動相場(制)という。この典型は、通貨の国際為替(かわせ)相場(レート)である。
相場は価格であるが、今日では価格全般をさすことはなくなり、取引所で取引される株式、商品、為替について形成される価格のみをさすようになっている。経済が国内を主体にしていた段階では、株式と商品の相場が有名であったが、国際化時代の今日では、外国為替とくに円のドルやユーロ換算相場がむしろ一般になじみ深くなった。株式の相場は、市場全体の動きを示す相場(平均株価など)、業種別の相場、個別銘柄別の相場がある。平均株価には、単純平均株価、修正平均株価(ダウ平均、日経平均など)、移動平均株価がある。相場が上昇して市場が活況を呈すようになる状況を「強い」、反対に相場が下降して市場が沈滞する状況を「弱い」、相場が底をつき上向きに転じかける状況を「底入れ」という。また、強い相場には、その原因によって金融相場や業績相場がある。金融相場は、金融緩和による金余りを背景にした高相場であり、したがって景気上昇時のみでなく景気後退期にもありうる。それをとくに不景気の株高などという。
[森本三男]
一般的には,ある時点における市場でのある物品の需要(買い)と供給(売り)によって決定する取引価格のことをいう。本来相場というのは,時々刻々に変動するが,物品によっては,その取引価格が一定の期間あらかじめ決められた取引価格で取引される場合がある。これを〈固定相場〉という。しかし今日一般に〈相場〉というとき株式,為替などの取引所で形成される価格をさし,その価格は取引が行われるごとに変動を伴うものである。株式取引における相場は,各取引所に上場されている株式の取引によって形成された値段をいうが,この場合,市場全体(および市場全体を代表する株価指数も含め)の動きによる相場と,産業別,業種別,個別銘柄の動きによる相場とが存在する。市場全体が活況を呈し,上昇しているときの相場を〈強い相場〉といい,反対に下降しているときは〈弱い相場〉という。なお〈強い相場〉を表す用語に〈金融相場〉〈業績相場〉があるが,これはそれぞれ,金融緩和・金余りを背景とする株高,企業業績の好転・向上に伴う株高をいう。なお景気後退期でも株高現象がみられることがあるが,これは〈不景気の株高〉(金融相場の一種)という。
執筆者:原木 保平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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