日本大百科全書(ニッポニカ) 「真壁(建築)」の意味・わかりやすい解説
真壁(建築)
しんかべ
架構式構造において、軸組材の面内(めんうち)に壁を収める建て方で、大壁(おおかべ)造とは逆に柱などの部材が壁面に露出する形となる。伝統的和風建築はほとんどこの真壁造により、通常は小舞(こまい)下地土壁で壁をつくるが、板その他の乾式材を用いることもある。真壁造では柱などの軸組材が化粧となるので、それらには美材が選ばれ、継手(つぎて)、仕口の加工さえも単に強度をもたせるだけではなく芸術的な扱いを必要とし、そのために日本の大工技術を世界の最高水準まで引き上げることになった。また軸組が外気にさらされるので、大壁造ほどには湿潤の害を受けることは少ない。しかし、美観を重視するあまりか鉄物(かなもの)(釘(くぎ)、ボルトなど)による軸組の補強を極力避けようとし、筋違いなどの組込みも困難であるので、建物全体の強度としては大壁造に劣ると考えられる。真壁造のいま一つの見どころは、ちり幅(柱面から壁面までの沈み幅)を各壁の四周に関し一定とすることで、これまた日本では左官工事などで細心の注意を払って施工される。ヨーロッパでいうハーフティンバーhalftimberも一種の真壁造であるが、建築全体の構成にはみるべきものがあっても軸組材は一般に粗放であり、ましてちりにまで考慮の払われることはない。
[山田幸一]