真秀(読み)マホ

デジタル大辞泉 「真秀」の意味・読み・例文・類語

ま‐ほ【真秀/真面】

[名・形動ナリ]
よく整って十分なこと。完全なこと。また、そのさま。和歌では多く「真帆」に掛けて使われる。⇔かたほ
「しなてるやにほの湖に漕ぐ舟の―ならねども逢ひ見しものを」〈・早蕨〉
正面から向きあうこと。また、そのさま。
「いとほしとおぼせば、―にも向かひ給はず」〈初音
正式であること。また、そのさま。
「―のくはしき日記にはあらず」〈絵合
直接であること。また、そのさま。うちつけ。
「さすがに―にはあらで、そそのかしきこえて」〈真木柱

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精選版 日本国語大辞典 「真秀」の意味・読み・例文・類語

ま‐ほ【真秀・真面】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 「ま」は接頭語、「ほ」は高くぬきんでているものの意 )
  2. 物事が完全であること。そなえるべき条件がよく整いそなわっていること。また、そのさま。⇔偏(かたほ)
    1. [初出の実例]「この落窪の君の御事、まほに知り侍らず」(出典:落窪物語(10C後)一)
  3. 遠慮なく正面きって事をすること。あらわに内心を行動に出すこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「人しれぬかげとや頼む葦のほのけふはまほにも出にける哉」(出典:小馬命婦集(980‐983頃か))
  4. まともな態度をとること。まじめにきちんとした態度をとること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「高麗の青地の錦の、はしさしたるしとねに、まほにも居で」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  5. 正式であること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「まほの、くはしき日記にはあらず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
  6. 十分に相手を見きわめられるような状態であること。十分であること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「まほならねど、その夜のかたち、ほの見し」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
  7. まともに向きあうこと。隔てを置かず、直接に対座すること。また、そのさま。直接。
    1. [初出の実例]「いとほしとおぼせばまほにも向ひたまはず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)初音)

真秀の語誌

( 1 )上代では「まほら」「まほろ」のように接尾語「ら」「ろ」を伴い、「まほ」の形では見られない。
( 2 )中古以降、「まほに」「まほの」の形で、あるいは形容動詞化し、さらに、否定形「まほならず」の形で盛んに用いられる。

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