破産者に対する売掛代金や賃金債権など,破産手続においてこれを届け出ることによって破産財団から公平な弁済を受けることができる債権。破産債権となるためには(破産法15条),(1)破産者の総財産から弁済されるべき対人的請求権であること,(2)金銭債権に限らないが財産上の請求権であること,(3)執行可能であること,(4)破産宣告前の原因に基づいて生じたものであることが必要である。例外として,破産宣告後に発生するもので破産債権とされるものもある(38条,57条,60条1項,61条2項,63条2・3項,65条,78条2項)。破産債権の種類・内容や履行期などは多様であるが,破産手続においてはこれらに公平な満足を与えなければならないので,すべての破産債権は金銭化し,弁済期も破産宣告時に到来したものとし(17条),債権額も確定させて(22,23条)等質化される。破産債権は同一順位で平等に弁済されるのが原則であるが(40条),債権の性質,債権者との関係によって,一般の先取特権のように一般の破産債権に優先するもの(優先的破産債権)と破産宣告後の利息のようにこれに劣後するもの(劣後的破産債権,46条)とが認められる。破産債権は,破産手続によってのみ行使することができ(16条),個別の請求は許されない。債権者は定められた方法で裁判所に届け出て(228条)はじめて手続上破産債権者として遇される。裁判所は届出に基づいて債権表を作成し(229条),債権調査期日を開いて調査する(231~239条)。管財人・債権者から異議がないときは届出どおりに確定する(240条1項)。確定した債権についての債権表の記載は,破産債権者全員に対して確定判決と同一の効力を有する(242条)。異議のあった債権は確定せず,破産手続外でその債権者と異議者の間でする債権確定訴訟で確定させる(244~252条)。債権確定訴訟の判決も破産債権者全員に対してその効力を有する(250条)。確定した債権は配当によって弁済されるが,完済に至らない場合でも,破産者の申立てがあれば残債務については原則として免責が与えられる(366条ノ2~)。
執筆者:西澤 宗英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権を破産債権という(破産法2条5項・6項)。破産債権は、(1)破産者に対する請求権であること、(2)原則として破産手続開始前の原因に基づいて生じた請求権であること、(3)財産上の請求権であること、(4)強制できる請求権であること、がその要件である。破産債権の行使は、原則として破産手続によらなければならず(同法100条1項)、その債権の届出(とどけいで)、調査、確定(同法111条以下)の手続を経て、債権額に応じた割合配当を受けることになる。なお、調査において異議等なく確定した破産債権については、その債権表の記載は破産債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する(同法124条3項)。破産手続は破産者の財産を換価して弁済する手続であるから、破産手続開始の決定により破産債権は等質化される。すなわち、弁済期未到来のものは破産手続開始のときに弁済期が到来したものとみなされるし(同法103条3項)、非金銭債権などは破産手続開始のときにおける評価額が破産債権の額となる(同法103条2項1号)。
破産債権は破産手続における弁済の優先劣後の関係から、優先的破産債権、一般破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権の区別を設けている。一般の先取特権(民法306条~310条など)、その他一般の優先権ある破産債権(たとえば企業担保法2条)は優先的破産債権となり(破産法98条)、破産手続開始後の利息の請求権、破産手続開始後の不履行による損害賠償または違約金の請求権、罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金または過料の請求権(同法97条1号~7号参照)などは劣後的破産債権とされる(同法99条1項)。また、約定劣後破産債権は劣後的破産債権に後れる(同法99条2項)。
[内田武吉・加藤哲夫]
『加藤哲夫著『法律学講義シリーズ 破産法』(2009・弘文堂)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…こうして,法定財団に一致するように整理された財産が債権者に対する配当の原資となり,管財人は,一般の債権調査終了後,これを随時適当な方法で換価して(196条),配当にあてることになる。(3)破産債権 債権確定手続 破産宣告前の原因に基づいて破産者に対して財産上の請求権(破産債権)を有する者は,破産債権者として,破産手続に参加して平等の満足(配当)を受けることができる(15条)。破産債権は,破産手続によってのみ行使することができる(16条)。…
※「破産債権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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