魚油、大豆油、菜種油などの脂肪油に水素添加した白色固体脂肪である。パーム油、牛脂など脂肪を原料とするものもある。部分的に水素添加することも多く、これを半硬化油という。原料油は成分脂肪酸としてオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、高度不飽和脂肪酸などの不飽和脂肪酸を含むが、水素添加油は不飽和脂肪酸に水素が添加して不飽和脂肪酸が減少し、ついには飽和脂肪酸となり、固体脂肪となりうる。水素添加途中で不飽和脂肪酸は多数の異性体を生成する。色調はよくなり、臭気は減少し、ヨウ素価、屈折率は低くなり、融点は上昇し安定になる。工業的に水素添加するには、原料油を反応器中に入れてから、加熱し、水分および空気を除去し、ニッケル触媒を加え、攪拌(かくはん)し、水素を導入加圧する。反応器下部にたまる油を反応器頂部から細雨状に入れることを繰り返して反応させる。硬化油の反応条件は通常4気圧、180℃である。原料油中の特定の不飽和部分(たとえば二重結合二つ以上を有する部分)を選択的に水素添加することを選択的水素添加という。この際1.5~3気圧、175℃が適当である。この反応条件設定は複雑であり、通常、水素添加は回分法で行われる。連続法もある。硬化油の用途は、マーガリン、食用油、せっけん原料、脂肪酸およびグリセリン製造原料である。
[福住一雄]
不飽和脂肪酸を多く含む油脂に水素を化合させて飽和脂肪酸とすることにより,改質を加えた油脂。ダイズ油,ナタネ油,魚油,鯨油等の乾性油,半乾性油は,その成分にオレイン酸,リノール酸,リノレン酸などの不飽和脂肪酸を多く含み,常温では液体であるが,水素添加することにより,飽和脂肪酸とイソオレイン酸のグリセリドを主成分とする固体の脂肪とすることができる。硬化油の製造は,脂肪油に比べて生産量が比較的少ない脂肪の硬化を目的として行われたが,一方,魚油,鯨油の場合には,その成分の不飽和脂肪酸および含有不飽和化合物が悪臭,変質の原因となるため,これを水素添加して飽和化合物とし,無臭で安定な利用価値の大きなものにするという目的もある。また近年は回収油脂の改質にも利用されている。工業的には,脂肪油をニッケル系触媒を用いて,160~180℃,常圧ないし数気圧の比較的低圧条件下で水素と反応させて製造される。反応後ろ過により触媒を除去し,希硫酸で洗浄,精製して製品とする。魚油等を原料とした硬化油で,食用を目的とする場合は,硬化油に特有の蠟臭を除くため,減圧による脱臭など,十分精製する必要がある。硬化油は,融点,ケン化価,ヨウ素価などに応じてさまざまな用途をもっている。食用硬化油としてはマーガリン,ショートニング(可塑性,乳化性をもたせた固状または流動性の油脂)として用いられ,また,セッケンやステアリン酸の製造原料,研磨用蠟としても利用されている。なお,水素添加を選択的に行うと,リノール酸グリセリドが少なくイソオレイン酸グリセリドに富んだ軟質の硬化油が得られ(半硬化油という),マーガリン原料に用いられている。
執筆者:内田 安三
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脂肪油中に含まれる液状の不飽和脂肪酸の二重結合に,水素添加して飽和脂肪酸にかえ,固形脂肪としたもの.通常,微量の還元ニッケルを触媒として,180 ℃ 前後で水素化する.せっけん,マーガリン,化粧品,軟膏,ろうそく,光沢剤の製造に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
※「硬化油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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