一般には、身体や筋肉が収縮したまま硬くこわばって自由に動かなくなった状態をいうが、医学的には死後硬直、去脳硬直などの場合に用いられる。死後硬直は死剛(しごう)ともよばれ、死斑(しはん)、死冷などとともに死後変化の一つとしてあげられている。死後、弛緩(しかん)した筋肉は、その後の化学的変化によって頭頸(とうけい)部の筋肉から順次に下半身にかけて硬直をおこし、さらに時間が経過するとふたたび弛緩するが、これを「死後硬直が寛解した」と称する。通常、この硬直状態と死後の時間的推移との一致が実証されているため、法医学的に死亡時間の判定に利用されている。しかし、外気の温度などの死亡時の状況、あるいは個体の状態、または死因など種々の条件によって左右されるために、判定が困難な場合も少なくない。また、去脳(除脳)硬直とはシェリントンが1898年に発見したもので、イヌ、ネコなどの脳幹部を切断すると、頭やしっぽを反らし、四肢を伸ばした状態、つまり筋肉が緊張硬直した状態になることを意味している。これは、体の平衡や姿勢保持の機能を有する脳幹部は、大脳皮質などの上位脳から抑制を受けていることを実験的に確かめたものとして知られる。
[渡辺 裕]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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