確率論的安全評価(読み)かくりつろんてきあんぜんひょうか

知恵蔵 「確率論的安全評価」の解説

確率論的安全評価

原子力施設で起こり得るあらゆる事故故障について発生頻度とその影響とを定量的に評価する手法両者を掛け合わせたものがリスクとして十分小さいかどうかを判断する。施設の安全性のレベルを定量評価するとともに、相対的弱点を明確にできる。例えば、加圧水型炉では、一次冷却系配管の破損などが起こる頻度を出し、その際に緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動するかしないかの確率を掛ける。さらにさまざまな条件化でどのような現象がどんな確率で起きるかを算出して、それらの確率を掛け合わせる。最終的に放射性物質が大量に放出される大事故になる確率を求める。引き金になる出来事に始まり、その結果をいくつものケースに分けていくので、事故の経過をたどる線が次第に枝分かれしていく。これを図示したものをイベントツリーと呼ぶ。日本では現在、シビアアクシデント(核暴走や炉心溶融などの過酷事故)のリスクの低減のために、各原発で「アクシデント・マネジメント」の整備作業が進行中。プラントごとにPSAが実施され、その結果を参考に安全性を向上させる対策が検討されている。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「確率論的安全評価」の意味・わかりやすい解説

確率論的安全評価
かくりつろんてきあんぜんひょうか
probabilistic safety assessment; PSA

発生する可能性のあるすべての事象の確率を考慮して,人工的システム人間行為の安全性を数量的に評価,分析する手法。一般的には,どのような事象が重なって起これば重大な事故につながるかを考え,事象の発生確率から事故の発生確率を計算するイベントツリー解析 ETAと,それら個々の事象の発生確率を,システムや行為の構成要素にまでさかのぼって求めるフォールトツリー解析 FTAによって行なわれる。こうして求めた事故発生確率と事故の規模からリスクを評価し,意思決定やシステムの改良に利用する。

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