磁石のもつ磁極に対して力を及ぼすような場を磁場または磁界といい、記号Hで表す。単位はCGS単位系ではエルステッド(記号Oe)、MKS単位系またはSI単位系(国際単位系)ではアンペア毎メートル(記号A/m)である。磁場は強さと方向をもつベクトル量で、単位の強さの正磁極に対して及ぼす力で、その強さと向きを表す。孤立した磁石に磁場を加えると、そのN(正)極に働く力とS(負)極に働く力とは、大きさが等しくて方向が反対であるため、偶力を形成し、磁石のS→Nの方向が磁場Hの方向に平行になるまで磁石を回転させる。磁石の上に紙をのせ、上から砂鉄をまくと、磁石の一つの極から他の極に向かう多くの磁力線を描くが、これは、砂鉄の粒に生じた磁極が隣の粒の異なる符号の磁極と引き合って線状に並ぶからである。磁力線の向きは各場所での磁場の向きに一致し、磁力線の密度は、各場所での磁場の強さに比例している。磁場はまた磁位の勾配(こうばい)として表すこともできる。
磁力線は磁石のN(正)極から出てS(負)極に達する。磁石の内部ではそのN極からS極に向かう磁場は、磁石の磁化の向き(S→Nの向き)と反対向きであるため、磁石の磁化を減らすように働く。このような磁場を反磁場という。孤立した磁性体を磁化することは、強い反磁場を生ずるために困難で、反磁場を減らすために一般に磁気回路が用いられる。発電機、電動機、変圧器などでは、いずれも鉄心によって磁気回路がつくられている。
磁場を発生するには、その強さに応じて種々の方法が使われる。すなわち、数千Oe(数十万A/m)までは永久磁石が、3万Oe(2.4メガA/m)までは電磁石が、10万Oe(8メガA/m)までは数メガワットの大型直流電源を用いた空心コイルが、また15万Oe(12メガA/m)までは超伝導コイルが用いられる。それ以上の強磁場は、容量の大きなコンデンサーにためた電荷を低抵抗のコイルに放電し、瞬間的にコイルに大電流を流して、短時間だけ発生させる。この方法で、普通50万Oe(40メガA/m)までの磁場を発生させることができる。
それ以上の強磁場では、前述の方法では、強い電磁力のためにコイルは破壊してしまうので、磁束濃縮という方法が用いられる。これは、金属製の円筒の中に磁束を通しておき、円筒を爆薬または電磁力を使っておしつぶす方法で、その間に電磁誘導の法則によって、磁束は一定に保たれるので、磁束密度は急激に増大し、数メガOe(数億A/m)の超強磁場が瞬間的に発生できる。
[近角聡信]
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磁石は鉄粉を引きつけ,針金を流れている電流は付近の磁針を振れさす.このように,磁石や電流のまわりの空間は特殊な状態になっているので,そのとき,この空間に磁場(あるいは磁界)が存在するという.磁場の性質を表す量は磁場の強さH,または磁束密度Bである.磁化の強さをMとすると,これらの量の間にはガウス単位系では
B = H + 4πM,
国際単位系(SI単位)のE-H対応では
B = μ0H + M
なる関係がある.ここに,μ 0 は真空の透磁率である.磁場の強さはガウス単位系ではエルステッド(Oe),国際単位系では A m-1 で,後者は4π×10-3 Oe である.
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磁界ともいう。磁極に対して力を及ぼす空間,またはその作用をもつベクトル量のこと。1Wbの磁極に対して,1Nの力を及ぼす強さを単位にとり,これをA/m(アンペア毎メートル)と呼ぶ。CGS単位系では磁場の単位名はエルステッド(Oe)で,これは約80A/mに等しい。磁場は永久磁石や電流を流したコイル,ソレノイド,電磁石などによってつくられるが,その強さは磁極からの距離の2乗に反比例する。磁場内において,その点における磁場の接線方向に一致する曲線を磁力線line of magnetic forceといい,磁力線の密度はその点における磁場の強さに比例している。なお,地球の磁場については〈地磁気〉および〈磁気圏〉の項を参照されたい。
→場
執筆者:近角 聡信
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…すなわち,速度を速めれば速めるほど,文章の主語と時制があいまいになり,主体の払散あるいは崩壊とみなしうる状態に立ちいたった。稀有な解放感を伴うこの状態を,狂気への端緒とも感じざるをえなかった彼らは,実験を中止し,それまでの成果を《磁場Champs magnétiques》(1920)と題するテキスト集にまとめた。その後パリ・ダダ時代には表面化しなかったが,22年にいたって,いわゆる霊媒現象との関連が確認され,デスノスらの催眠術をかけられた状態での口述・記述の実験へと発展する。…
…1917年に処女詩集《水族館》を発表し,当時の若き前衛の一翼をになう。19年,ブルトンとともに自動記述の実験を行い,《磁場》と題して発表。20年からはダダ運動の一員として活躍,のちシュルレアリスムにも加わったが,やがて離反し,独自のジャーナリスティックな活動を展開した。…
…電気および磁気の現象の統一的な理論をつくりあげることが,当時の野心的な物理学者すべての目標であった。これは,後の電磁場の理論を生みだしていく方向であった。その発展の中で,多彩な電気技術の発展の基礎である電磁誘導の発見も行われた。…
…電場と磁場の総称。二つの電荷q1,q2が距離rだけ離れて存在しているときに,その間には,の力が働く(クーロンの法則)。…
…この事実は,それが電流であること(つまり静電気では起こらない),また従来の引力(静電気や磁力の場合には斥力も加わるが)のように,点と点との間に,直線的に働くのではないことなど,遠隔作用力で説明するには困難な性格をもっていた。そこからファラデーの磁場(電場)という着想が現れる。この着想の物理学的意味は重要であり,その説明とその後の展開については次項に譲るとして,より広範囲な文脈での意味もまた見逃し得ない。…
※「磁場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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